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社会人が大学院で研究する意味 (PR)

なぜ都市と企業は「依存」と「らしさの喪失」に陥るのか──社会人が研究で得る「考える力による差異」とは

ゲスト:埼玉大学経済経営系大学院 教授 朴英元氏、准教授 内田 奈芳美氏

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ベスト・プラクティスによる日本企業の“らしさの喪失”

宇田川元一

宇田川:先ほど朴先生は都市だけでなく、企業や個人レベルでも均質化が進んでいるとおっしゃっていました。朴先生の研究からも、そういったことが見えてきているのでしょうか。

朴:私はコア・コンピタンス戦略をテーマに研究を進めていますが、コア・コンピタンスは「らしさ」の学問なんです。研究は個人レベルでの「らしさ」からスタートして、その後は企業を中心に研究をしていきます。今は持続可能な社会や環境に注目が集まっていますが、本来は個々人や社会、企業がそれぞれ「自分らしさ」を追求していけば非常にバランスがよくなるはずだと考えています。個々の能力や特性はみんな違うものを持っていますから。

 ところが今はみんなが、「うまくいっているように見える」方向に走ってしまい、結果として過当競争になってしまっています。私はそこに、ものづくり大国日本でiPhoneが生まれなかった理由があると考えています。アップル社がグローバル企業になった理由はマッキントッシュ・コンピューターではなくiPodやiPhoneにあると思いますが、最初にiPodが出てきた時代、日本企業でもMP3プレーヤーはたくさん作られていました。

宇田川:そうですね。技術的には作れたんですよね。

朴:技術的には全く負けていませんでしたし、携帯電話などもすでに日系メーカーが圧倒的に優位性を持っていたんです。日系大手メーカーの中では、小型化能力に長けているところもありました。でもiPodのような商品は作れませんでした。

 一方、スティーブ・ジョブズは、アップル社から追い出されて、ピクサー・アニメーション・スタジオを設立するという環境の中でアニメのコンテンツを作りながら、今のiTunesのような世界が重要だと気づくのです。お客さんに対して、ハードウェアを提供するだけではなく、お客さんが「価値がある」と評価できる環境を作り、お客さんのライフスタイルをもデザインしていくことが必要だと。それでジョブズがアップル社に戻ったのちに、アップル社はグローバルな会社になったと私は思うんです。

 ところが、日本企業はちょうどその頃、バブル崩壊後に白物・黒物家電を中心にサムスンなど海外企業が追い上げてきたのを受けて、採用制度や評価制度を大きく変えてしまいました。それまでは長期的な視点で開発することを評価し、自社に合った人材を独自に採用することで企業のコア・コンピタンスを守っていたのに、急にサムスンなどの成果報酬システムなどを取り入れようとしてしまったんです。

 その当時のサムスンは、海外企業をキャッチアップするために早く能力を身につけて素早く意思決定できる人材を評価する必要がありました。短期的な視点で経営をし、スピードを強調しているからこそ、成果報酬システムは意味がある制度になるんです。

宇田川:つまり、ベスト・プラクティスを各社が求めて他社の制度を表面的に真似た結果、それぞれが持っているユニークネス、勝ちパターンを捨てることになってしまったということですね。本来であれば、採用や評価制度も含めて、きちんと自社の「らしさ」を育てて、会社が辿った歴史も含めた必然を考え、それをプロダクトやサービスに表現することが必要なのですよね。

 でも今はビジネスメディア等を見ても、多くの人や企業がライフハック的なものばかりを求めているように感じます。けれど、それでは均質化していくばかりですよね。

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自身の既知と無知を知った上で他者の視点を借りるのが「本質的な学習」

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