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社会人が大学院で研究する意味 (AD)

なぜ都市と企業は「依存」と「らしさの喪失」に陥るのか──社会人が研究で得る「考える力による差異」とは

ゲスト:埼玉大学経済経営系大学院 教授 朴英元氏、准教授 内田 奈芳美氏

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なぜ地方都市は「らしさ」を失い、「均質化」に陥るのか

内田:先ほど差異の話がありましたが、私の研究分野でも差異に関する課題があります。

宇田川:内田先生は都市論を研究されていますよね。どういったことでしょうか。

内田:さまざまな都市で開発、再開発の事業が進む中で、ジェントリフィケーションが起きています。ジェントリフィケーションとは、低所得者層の居住地域が再開発や文化的活動などによって活性化し、その結果として地価が高騰することを指します。それが進む中でその都市の「らしさ」、つまりオーセンティシティを失うという「没場所性」の問題が起こっているんです。かつて人の行き来が少なかった時代には、風俗や文化の場所性が大きかったのですが、同じような都市政策を応用することによって、多くの都市が均質化してしまっています。

宇田川:ニューヨークのソーホー、クイーンズなどのように、開発をすることによって都市の機能性は上がり、地価も上昇するので経済的な価値は大きいけれど、結果的にはどこの街も同じようになっていく。そういうことでしょうか。

内田:そうですね。ただし、自治体にとっては固定資産税が上がるので経済的な価値は大きいけれど、賃貸に居住している人やテナント、また不動産を所有していて売るつもりがない人にとっては賃料や税金が上がるだけでメリットはないんですよ。

宇田川:アメリカの都市建設者・政治家でニューヨークの大改造を行なったロバート・モーゼスと、ジャーナリストで郊外都市開発などを論じ、また都心の荒廃を告発した運動ジェイン・ジェイコブスの争いに関する研究もされていますよね。

内田:そうですね。両者の論争は60年代の大都市部の話なので、インフラ整備に基づく都市破壊の要素が大きいんですが、大都市部だけでなく地方都市でも問題は起こっています。日本型ジェントリフィケーションの一部と言われているのですが、観光地化としての都市変容があります。観光地として便利さ、魅力を打ち出そうとして、逆にオーセンティシティの危機を招いているという都市がいくつもあるんです。

宇田川:先日、平田オリザさんと対談したのですが、企業戦略に関しても都市と同じようにある種の均質化が進んでいるという話になったんですよ。企業もイノベーションを生み出したいと思って、コンサルティング・ファームなどの支援者に頼ったり、新しいフレームワークを探したりする。でも、そうすると手法や考え方が均質化しているから、結果として何も差異が生まれないんですよね。地方都市も同じ状況だという話になりました。

朴英元 教授(以下、敬称略):なんとなくよさそうに見えるものにみんなが飛びついてしまうのですよね。企業レベルでも、個人レベルでも同じことが起こっているように思います。

宇田川:そうなんですよね。都市や企業が「らしさ」を取り戻すには、どんなことが必要なのか、お二人にお聞きしたいです。

朴英元埼玉大学経済経営系大学院 教授 朴 英元(パク ヨンウォン)氏

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都市と企業に共通する課題は「コンサル依存」と「均質化」

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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