グローバルでの無形資産活用、ローカルでの有形資産活用
大山 貴子氏(株式会社fog代表、以下敬称略):新型コロナウイルス感染症の影響で物流と人の移動が制限される中、グローバルでのサプライチェーンが分断されています。
そんな中スペイン・バルセロナでは、「Fab city」という循環型社会を目指すプロジェクトが行われています。高品質なものづくりをするために情報は世界中から集めますが、原材料を地元で調達する、いわば“ものづくり版地産地消”プロジェクトです。
物の移動が難しくなっていることもあり、今後は飲食業界だけでなく、全産業で知財やスキルなどの資産は「グローバル」で活用しつつ、原材料の調達と製造、消費は「ローカル」で行うことが標準的な取り組みになっていくのかなと感じています。
田中 宏隆氏(株式会社シグマクシス、以降敬称略):そうですね。少なくともフード業界では、競争優位の源泉がインタンジブルアセット、すなわち無形資産になっていくだろうと思います。資産には、もともと有形(タンジブル)と無形(インタンジブル)があります。有形資産としては、例えば人や装置、施設、不動産などが挙げられます。知的財産(IP)やノウハウ、スキル、使用権などは無形資産です。
今まで多くの産業では、有形資産を使った事業により収入を得て、企業が成長してきました。しかし、直近では、新型コロナウイルス感染症の影響でグローバルなサプライチェーンでの商品発送がしにくくなったり、レストランで人が作った食事を提供することが難しくなったりしています。このような変化を考えると、有形資産を使った事業だけに頼るのは事業継続の面でも難しいと思います。これからは、無形資産を使ったビジネスを事業の中に組み込んでいく必要性が増してくるでしょう。
食領域でも無形資産を事業に活用するというアイデア自体は以前からあったのですが、これまで日本の食品メーカーは業績が悪くなかったこともあり、それほど実現化が進んで来なかったのです。その結果、グローバル企業に遅れてしまった。今後は日本でも、無形資産を生かした新しいビジネスを考えていかなくてはなりません。