デルタモデルで戦略を実行に落し込む3つのプロセス
デルタモデルでは、戦略を実行に落し込む主要なプロセスを3つ特定しています(図5)。それは、「イノベーション(新しいプロダクトやサービスの開発)」、「顧客ターゲティング(顧客リレーションシップの管理)」、「オペレーション効率(プロダクトやサービスの生成とデリバリ)」であり、どのようなビジネスにおいても共通するものです。各々を簡単にご説明していきましょう。
「オペレーション効率」とはコストの変動要因を考慮すべきプロセス
図6は、オペレーション効率という1つ目の適応プロセスを焦点、成果物、ゴールという3つの側面から比較したものです。コスト効率という観点でいえば、ベストプロダクト、トータル顧客ソリューション、システムロックインと移っていくにつれて、自社のみ、自社と顧客、ビジネスモデルの利害関係者全体へとその範囲を広げて考えていく必要があることを示しています(図7)。
「顧客ターゲティング」とは、収益性の変動要因を考慮すべきプロセス
2つ目の適応プロセスは、顧客ターゲティングです。オペレーション効率がコストの変動要因を考慮すべきプロセスであるとすれば、顧客ターゲティングは収益性の変動要因を考慮すべきプロセスです。ベストプロダクトでは、幅広い顧客と接するためのチャネルミックスが重要であり、そのゴールは市場シェアを高めることにあります。一方、トータル顧客ソリューションでは、ターゲット顧客との深い李ショーションを構築するためのチャネルが重要であり、ゴールは顧客の財布シェアを高めることにあります。さらに、システムロックインにおいては、各々の関係者の収益性を高めるためのノード企業としての役割が求められます(図8)。
戦略ポジションごとに異なる「イノベーション」プロセス
3つ目の適応プロセスは、イノベーションです。ベストプロダクトでは、既存のプロダクトライン上の新製品や新サービスを、ライバル企業よりも早く市場に投入することが重要になります。一方、トータル顧客ソリューションでは、ターゲット顧客向けにプロダクトやサービスを組み合わせたり、カスタマイズしたりすることにより顧客のパフォーマンスを向上するためのイノベーションが求められます。システムロックインにおけるイノベーションは、ビジネスモデル自体のイノベーションが中心となります(図9)。