アズビル金門が挑むメーターの“as a Service”化
最初に登壇したのは、アズビル金門株式会社 代表取締役社長、上西正泰氏。明治37年に金門商会として創業した同社は、ガス・水道メーターを初めて国産化した会社であり、2005年にazbilグループの一員となっている。現在はメーターというプロダクトに加え、測定結果のデータを顧客に提供するサブスクリプション型の事業、Smart Metering as a Service、通称「SMaaS事業」を手がけている。
上西氏は、SMaaS事業の1つであるLPガスメーターの“as a Service”化について紹介する。
従来のLPガスは、月に1回検針員が検針し、その結果からLPガスボンベの交換周期を決めており、顧客がLPガスの利用中にガス切れが生じることを防ぐため、細心の注意を払い、早めの交換を実施していた。そこで、ガスの使用量をクラウド上で確認できるサービスを開始した。毎日データ確認ができるようになると、ボンベ交換時期を正確に把握できるようになる。上西氏は、「LPガスの残量をできるだけ少なくしてからLPガスボンベを交換できるため、30%程度の効率化が図れると考えています」と述べた。
このサービスはボンベ交換の効率化を図るだけでなく、LP事業者の経営指標や会計業務、営業業務にも役立てられている。また、ガスメーターには長時間利用や異常検知、ガス警報器と連動する機能などもあり、そのようなステータスを読み取ることによって保安業務にも貢献しているという。
「クラウドサービス利用が基本ですが、様々なアプリケーションや付加サービスもアップセルとして提供しつつ、通信端末やメーターも含めてクロスセルすることもあります。サブスクリプションビジネスに転換したことで、多様なメニューの契約管理が必要となります。Zuoraのアプリケーションが煩雑な管理を下支えしてくれました」
続いて上西氏は、企業が生み出す社会的価値を「モノ売りとサブスクリプション」という切り口で紹介する。モノ売りの場合、売る側は一度の取り引きで収益管理が終わってしまうが、買い手は使用している間、価値を享受する。これでは売り手と買い手のベクトルが一致せず、社会的な価値を生み出しづらくなってしまうのだ。一方サブスクリプションの場合、長期的に価値を提供し続けようとする売り手と、長期的に価値を享受しようとする買い手のベクトルは一致するため、企業は顧客の要望に添うことで社会的価値を生み出すことが可能となっている。これこそがサブスクリプションの魅力だと上西氏は強調した。
最後に今後の展望について紹介した。ガス・水道メーターを製造しているアズビル金門と、電力メーターメーカーが「DX-EGA」というチームを組み、それぞれのデータを重ね合わせたサービスの提供を検討しているという。電気・ガス・水道のメーターのデータを分析することで、高度な見守りサービスや、ライフスタイル分析サービスを生み出そうというのだ。
上西氏は、
「モノ売りをしてきた製造業がサブスクリプションビジネスに転換する場合、営業プロセス変革やSFA・CRMの導入が必要だが、弊社としてはそれよりも先にまず始めてみたことが大きかったと思います。始めたからこそ課題がわかるし、工夫もできます。サービスだけでなく、ビジネスモデルも永遠のβ版だと考えているので、『まず始めること』こそが大事だと思います」
と語って講演を終えた。