ディスラプターの脅威に対するFFGの3つの戦略
福岡銀行など九州地域の4銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(以降FFG)は、九州を主な営業基盤として展開する、国内最大級の広域展開型地域金融グループである。同社は2015年からデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手しており、2020年8月に経済産業省が発表した「DX注目企業 2020」に地銀で唯一選出されている。
FFGがDXに取り組み始めたのは、海外投資家にDX戦略とそのPLインパクトを問われたことがきっかけだ。当時、JPモルガンのジェームズ・ダイモンらも、シリコンバレーから生まれる金融業界のディスラプターの脅威を主張し始めていた。
では、一体どれくらいの市場破壊が予測されるのだろうか。横田氏は、以下のように説明する。2030年、生産人口年齢におけるデジタルネイティブ顧客数は4,260万顧客になる。一方、ミレニアル世代のネットバンクメイン利用層のうち、UI/UXが他業界に比べて劣っていると認識する割合は83%だ(アクセンチュア「消費者の金融行動・意識調査2019)。計算上、2030年時点で既存銀行から離反し、ディスラプターに奪われる可能性のある顧客数は約3,500万人ということになる。
さらに、銀行業務のうち、現時点で4割の利用額を占める決済、運用、消費性ローンに関しては、既にディスラプターによる侵食が始まるか、早期の侵食が予想される領域となっている。残る住宅ローン、その他ローンといった融資の領域も、今後侵食されないとは限らない。そこで、FFGではこれまで築いてきたコア事業の磨き上げに加え、進化の具現化と事業領域の拡大に向けたチャレンジを加速。DXの推進を中期経営計画の中核戦略の1つに置いている。
上図がその戦略を図式化したものである。左側の「Ⅰ.デジタル化のエンジン構築」「Ⅱ.DXの推進」が基本的には既存事業の深化であり、右側の「Ⅲ.オープンイノベーション促進」は新規事業の領域だが、それらは相互作用を狙う。iBank事業などオープンイノベーション促進による知見を既存事業に還流し、既存事業の持つ強みを新事業にも繋げていく。
肝になるのは、「Ⅰ.デジタル化のエンジン構築」部分である。現状、メインフレームはIBMに100%アウトソーシングしているが、今後は内製化を進め、アジャイル開発体制を整えていく。また、データ利活用体制に関しては、データアナリストを養成し、銀行内のデータに加えて外部データも集め、データレイクとして活用していく。さらにAPI利活用に関しては、今後様々な外部システムから声がかかるようにと体制を整えていく。