インタビュー BZ Monthly Future

サステナビリティを企業戦略の中心に──消費者と投資家から求められる、長期視点での企業経営とは?

ゲスト:博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター 岩嵜博論氏

 毎月テーマを選定し、海外情報を中心とした最新トレンドを有識者が紹介・分析する「BZ Monthly Future」。博報堂ミライの事業室ビジネスデザインディレクターの岩嵜博論氏に、持続可能な成長を実現する新たな経済モデルとして注目を集める「サーキュラーエコノミー」をテーマに、世界の新潮流を語ってもらった。パタゴニア、アディダス、イケアやH&M、Loopなどの事例も交えて解説する。

[公開日]

[語り手] 岩嵜 博論 [取材・構成] 鈴木 陸夫 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ビジネスデザイン 事業開発 企業戦略 パーパス サーキュラーエコノミー

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サステナビリティと経済成長は相反しない

 いま、世界では「環境に良い」とか「サステナブルである」ことがビジネスデザインにおける大きなイシューになっている。その際に重要なのは、サステナビリティと企業の経済的な成長は相反するものではなく、両立できるということだ。むしろ、サステナビリティを追求することなしに、これからの企業の経済的成長は望めなくなっていくと岩嵜氏は語る。

 日本のビジネスシーンには、「サステナビリティ」や「環境や社会に良いこと」の追求とビジネスの成長は別物、あるいはトレードオフという認識が一般的だろう。日本企業のサステナビリティへの取り組みは遜色があるものではないが、こうした取り組みを企業活動の周辺領域に留めておくのではなく、次の成長に結びつけることで、あるべき世界の実現と企業としての競争力を両立することができるのではないだろうか。

 まずは、サステナビリティと経済的成長の両立を示唆する領域として、サーキュラーエコノミー(循環経済)について見ていきたい。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー

 従来の経済システムは「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Dispose(捨てる)」というリニア(直線的)なモデルになっていた。このシステムの中で廃棄されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、ほぼ100%廃棄物を出すことなく、資源を循環させる経済の仕組みがサーキュラーエコノミーだ。

タイトル図版出典:『CONSTRUCTING A GREEN CIRCULAR SOCIETY』P17/Characterizing linear economy, economy with feedback loops, and circular economy(RLi, 2015)[*1]

 捨てるものの一部だけをリサイクルするのは、エコノミーウィズフィードバックループと呼ばれ、サーキュラーエコノミーとは別物(リニアからサーキュラーへの移行段階)として扱われる。

「この世界は有限である」エレン・マッカーサーの取り組み

 このサーキュラーエコノミーの実現を世界的に推進するオピニオンリーダーと呼べる存在が、エレン・マッカーサー・ファウンデーションだ[*2]。創設者であるエレン・マッカーサーは、現在44歳の元ヨットセーラー。小さい頃からヨットが大好きで、20代前半でヨットの無寄港世界一周に挑戦。記録も持っている。

 彼女には「私が世界一周単独航海で学んだ意外なこと」という有名なTEDトークが[*3]がある。無寄港世界一周をしている際、彼女はふとした瞬間に、ヨットの中にはいま手元にある物資しかなく、自分がいかにfinite(有限)な状況にあるかに気づいた。さらにそこからイマジネーションを膨らませ、これは地球そのものについても言えることだと思うようになったという。

 その有限な世界をいま、人間はある意味、食いつぶして生きている。この状況をなんとかしないといけないと考えたところから、彼女はヨットから離れ財団を設立する。ヨットで稼いだ賞金を自ら拠出しながら賛同者を募り(TEDトークもその一環)、2019年までに約20億円を集めて、サーキュラーエコノミーの実現を強力に推進している。

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