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オードリー・タンが語る、DX推進の本質と未来とは?

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 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言から早くも1年が過ぎようとしている。経済におけるあらゆるシーンに大打撃をもたらした新型コロナウイルスだが、皮肉なことに世界から取り残された日本のデジタル化の追い風ともなった。2021年は経済産業省が定めた「DXファースト期間」の幕開けの年。この機を逃し、失われた10年を繰り返すのか、再び世界で戦うために行動に移すのか。  Sansan株式会社は「Sansan Evolution Week 2021 Spring - The Dawn of DX -」と題したオンラインイベントを開催。その中から、「How to accelerate DX」と題した3月11日のセッションの様子をお届けする。登壇者は台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タン氏、モデレーターは一橋大学名誉教授の石倉洋子氏が務めた。

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日本のDXに欠けている“インクルージョン”

石倉洋子氏(以下、敬称略):日本では新しい行政機関としてデジタル庁が立ち上がり、民間企業も業種を問わずDXを大きなスローガンとして掲げています。ただ、“提案”は得意だが“実行”は後手に回りがちという日本人の傾向があるので、私としてはDXがどのように実行されるか懸念しています。DXを実現する上で、結果を出すために最も重要なことは何でしょうか。

オードリー・タン氏(以下、敬称略):DXで重要な要素は、ITとデジタルを混同してはいけないということです。ITは「機械をつなげるもの」、デジタルは「人をつなげるもの」という大きな違いがあります。DXを推進する方々の仕事は、人々に声を与えて参画を促し、一方通行ではなく双方向で、多くの人たちを巻き込むことです。たとえば、テレビ番組の視聴のような一方通行ではなく、包括的な形で参加のビットレートを上げることが、正しいデジタル化の道のりだと思っています。逆に全てをつなげるだけで少数の声を皆が聞くというのは、デジタイゼーション(Digitization)でしかなく、真のDXではありません。

 ちなみに、日本のメディアの方によくこのお話をしますが、私は「デジタル」担当大臣であって「IT」担当大臣ではないということです。

石倉:オードリーさんの講演の動画を拝見し、書籍も読ませていただきましたが、日本で欠けている要素として、サステナビリティ、イノベーション、インクルージョンを挙げています。特にインクルージョン、全員が関与することはすごく重要だと思います。しかし、日本ではそれが実現できていません。インクルージョン、つまり包摂性、皆が関与するべきだということを、どのように共有すればいいでしょうか?

タン:台湾では選挙権のない18歳未満が政治に参加できる権利をデジタルプラットフォーム上で担保しています。たとえば、タピオカドリンクが流行った時に16歳の学生がプラスチックのストローをやめようという請願を投稿しました。どうして16歳でこの運動を始めたのかというと「実はこれは私の学校の宿題」だと言うのです。インクルージョンは、基本教育からスタートし、生涯教育にもつながっていくと考えているのですが、それは若い世代だけではなく60、70歳もこのプラットフォームで活発に活動しているからです。若い世代と高齢者がサステナビリティ、将来の社会を一番気にしているのです。そのため、この2つの世代のグループがお互い自然なパートナーシップを築くことができれば、インクルージョンは素晴らしいスタートを切ることができるようになります。

石倉:確かに私たちは初等教育に力を入れていく必要がありますが、子どもたちの中にインクルージョンという概念を醸成して花開くにはかなりの時間を要します。これを加速させる方法はありますか。

タン:もちろんあります。そのためには若者を巻き込むことが重要です。日本でも、14、5歳ながらも既に社会的な活動、起業を始めている方々がいると思いますが、台湾では、オンライン上で有名な20代から35歳以下の若者を、閣僚レベルの青年諮問委員会に迎えています。彼らがリバースメンターやアドバイザーとなり、閣僚たちを教育するのです。実際、先ほどのプラスチックストローの廃止を請願した少女は現在19歳ですが、現在はアドバイザーを務めています。

石倉:若者がそのようなきちんとした役割を与えられる、意思決定の場に立つということは、今のリーダーたちが考え方を変える必要がありますよね。そして新しいアイデアを持った人たちを包含していくということですが、それは簡単ではないと思います。今のリーダーに若者の力を認めさせるにはどうしたらいいでしょうか。

タン:ここでも高齢者との協力が重要です。私の祖母は88歳ですが、そのような高齢者は若い人たちを巻き込む必要性を語ることができると思います。たとえば、私たちのオフィスでは毎年18歳くらいの人たちをインターンで採用して、政府のウェブサービスがきちんと機能するように手伝ってもらっています。というのも、政府のウェブサービスというのは高齢者が使いやすいように設計されていなかったので、タッチスクリーンや音声の指示などを用いて利便性を向上する必要がありました。そのような活動を通して若者に対する批判的な意見は低減されて、世代を超えた連帯感が築かれたと思います。

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この記事の著者

比惠島 由理子(ヒエジマ ユリコ)

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