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進化思考とは何か?

『進化思考』太刀川氏と語る、生物の進化に学ぶ創造性──企業が環境変化を生き抜くための変異と適応とは

ゲスト:NOSIGNER 代表 太刀川 英輔氏、MIMIGURI マネージャー小田 裕和氏

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創造性の本質は生物の進化に似ている

小田 裕和氏(株式会社MIMIGURI マネージャー/デザインリサーチャー、以下敬称略):太刀川さんの『進化思考』と僕らの『リサーチ・ドリブン・イノベーション』には共通する点も多く、お話しできることを楽しみにしていました。まずは本を書かれた背景からお伺いできますか。

太刀川 英輔氏(NOSIGNER代表/JIDA:日本インダストリアルデザイン協会 理事長/デザインストラテジスト/慶應義塾大学特別招聘准教授、以下敬称略):僕は広い意味でのデザインの仕事をしています。今は「デザイナー」という言葉が非常に矮小化され、「形を決める人」みたいな職能になってしまっていますが、本来的なデザインはそういうものではありませんでした。50年くらい前までは、バックミンスター・フラーやイームズ夫妻のように、サイエンスとアートを駆使し、その時代における新しい価値を作るデザイナーたちがいました。今はそういう人たちが、スタートアップの経営者やコンサルタントとして仕事をしている場合もあるでしょう。

 僕はそういう仕事がしたくてデザインの活動をしているのですが、あるとき数えてみたんです。どう考えても自分が一生の間にできるプロジェクトは1,000個もないんですよね。社会課題は数千万個単位であって、僕一人ではとても手に負えません。一方で、世の中のデザイナーや事業を行う人たちは、そもそもあまり課題に興味がないということにも気づきました。社会に課題は無数にあるのに、そういうところに目が向く人が少ないんです。

 そこで、人の創造性を先に進めるための「創造性教育のアップデート」を自分のミッションだと捉え、10年以上にわたっていろいろなところで教えてきました。2045年ごろには人口は90億人に達する。その時に、創造性を持って課題を解決している人口を1%増やせるなら、約1億個のプロジェクトが生まれるはず。1,000個とじゃ比較になりませんよね。その教育をつくるために創造性の本質を探究するうち、「生物進化の現象」との類似性に気づき、深くその“沼”に入り込んでいったんです。創造性は理屈では説明できない超常現象のように思われますが、人間も自然の一部なのだから、その人間が創造性を発揮するのも自然現象であるはずです。そう考えて進化というものを見てみると、進化のプロセスには僕が普段デザインで考えていることにすごく似ている構造や、創造性と共通する仕組みがあるんですよね。

 今まできちんと構造化できなかった人間の創造性は、生物の進化についての科学的知見から読み解けるんじゃないか。その考えを僕なりに整理したのが『進化思考』です。すでに10年以上にわたってクライアントの企業などで教えてきたものを、本にまとめたというわけです。

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