インタビュー 「大企業による新規事業」のリアル

守屋実氏が語る、99%の企業内起業が犯す「7つの大罪」──大企業の新規事業に必要な“意志”とは

第18回 ゲスト:守屋実さん

 新規事業開発に携わる方へのインタビューを通じて、大企業内の新規事業開発における美学を探る本シリーズ。今回のゲストは、今年5月に『起業は意志が10割』を上梓した守屋実氏です。
 守屋氏はこれまで30年間、JAXA、JR東日本、博報堂、ラクスルなど52の起業・新規事業立ち上げに携わる中で、「大企業は必ず新規事業を生み出せるが、99%の事業が同じ間違い方を繰り返す。しかし、仕組みを変えれば会社は生まれ変わる」と気づいたと言います。そんな守屋氏に、企業内起業で意識すべきことを聞きました。聞き手は本気ファクトリー株式会社代表取締役の畠山和也氏です。

[公開日]

[語り手] 守屋 実 [聞] 畠山 和也 [著] フェリックス清香 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 新規事業 企業内起業

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“本業汚染”が大企業の新規事業を妨げる

畠山和也氏(本気ファクトリー株式会社 代表取締役、以降敬称略):守屋さんは19歳で学生ベンチャーの起業に参画して以来、新卒で入社したミスミで新規事業開発に従事したり、2002年に新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口弘氏と創業したりと、30年以上新規事業・起業に携わってきた“起業のプロ”ですが、大企業で企業内起業家に伝えたいことがあるそうですね。

守屋実氏(株式会社守屋実事務所 代表取締役社長、以下敬称略):そうなんです。まず伝えたいのは、「日本の大企業は“必ず”新規事業を生み出せる」ということなんです。大企業はなかなか新規事業が生み出せないと言われていますが、大企業には優秀な人材が豊富で、圧倒的な信用とネットワークがあります。その事業が成長軌道に乗った際に大きく育てることも、大企業ならやりやすいはずです。むしろ大企業は新規事業を生み出しやすいはずなのです。

 なのに、大企業の企業内起業は、99%が同じ間違いをしてしまっています。多くの企業が同じ間違いをするだけでなく、1つの企業で同じ間違いを何度も繰り返してしまうことさえあります。その失敗を避け、かつ仕組みを変えれば、新規事業は生み出せると思っています。

畠山:失敗に関しては後ほどじっくりお聞きしたいのですが、「仕組みを変えれば新規事業を生み出せる」とはどういうことなのでしょうか。

守屋:一言で表現すると「“本業汚染”の度合いを下げる」です。新規事業は、事業も組織も財務も、本業とはまったく違うとしっかり認識する必要があります。しかし、一般的にはどうしても“本業汚染”から抜けられません。大企業の本業は既に大きく育ちオペレーショナルなフェーズに入っているため、ミスはあってはならないものですし、予測が可能なものです。新規事業は多産多死が当たり前なのですが、新規事業も本業と同じ基準で評価してしまい、立ち上げ初日から完璧にミスなくやることを求めてしまうケースが非常に多いです。

 また、“純血主義”という間違いも、本業汚染による症状の1つだと思います。新規事業を立ち上げるなら、その新規事業に沿った体制を組む必要があるため、「起業のプロ」と「業界のプロ」の2人をチームに入れなくてはなりません。かくいう私も、ミスミという金型商社の新規事業で、金型のメンバーだけで医療分野に挑戦して失敗した過去を持っています。医療者だけが集まって金型を作ると言ったら「金型を甘く見るな」と思ったはずなのに、自分たちは、まさにそれを疑いもなくやってしまったのです。「起業のプロ」も同じような話です。身銭を切って人生を賭けて新たな事業に挑戦するとしたら、普通、伝手を辿って起業経験者に辿り着き、そのコツや勘所、失敗回避のためのエトセトラを必死に聞き出すと思うのです。それが「業務」としてアサインされただけだと、集められたメンバーだけで立ち上げを進めようとする。最適な体制で臨むのではなく、与えられた体制で臨んでしまうのです。

 また、現場が具体的な案件を考え起案すると「それは果たして我が社でやるべき事業なのか」というそもそも論な話が出てきて一向に事業を進捗させることができず、最終的に新規事業を生まない新規事業開発室となってしまいます。こういった症状は本当に頻出で、大企業の年中行事なのかとも思っています。

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