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ピジョンが実践するパーパス経営──「この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にする」を軸とした事業展開

第17回 ゲスト:ピジョン 北澤憲政氏

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 いま企業のあいだでは、社会における“存在意義=Purpose(パーパス)”を再定義して、「何のために存在しているのか」、社員一人ひとりは「何のために働くのか」を明確にする動きが活発になっています。これは技術革新や時代の変化によって価値観が変化したことや、企業都合のビジネスではなくサステナブルな経営が求められるようになった社会の変化も影響しています。  そこで、『パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える』の著者であるIdeal Leaders株式会社のCEO永井恒男氏が、既にパーパスを導入している企業の方をゲストに迎え、そのメリットを解き明かします。今回のゲストは、ピジョン株式会社の代表取締役社長 北澤憲政氏。経営理念に「愛」を掲げ、このほど改めて「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」というパーパスを策定したピジョンの取り組みについて話を聞きました。 ※取材はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保って行っています。

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なぜ経営上パーパスを重要視したのか

永井恒男氏(以下、敬称略):御社では「愛」を経営理念に掲げ、そして2019年に新たに「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」というパーパスを策定されました。まずはこのパーパス策定の経緯からお聞きしてもよろしいでしょうか。

北澤憲政氏(以下、敬称略):これからの企業はパーパスを考える方向に進むだろうということは耳にしていました。最初は「パーパスって何だろう」と疑問に思った程度でしたが、その後、2018年末に翌年から社長に就任することが内定したことで、具体的に考えるようになりました。

 それがちょうどブランディングファームのインターブランドジャパンさんとお付き合いを始めた頃でもあり、ブランド戦略と事業戦略を一体化させた基本戦略を掲げるにあたっても、存在意義(パーパス)の策定が必要であると考え、本格的に検討を開始しました。その議論で出てきた様々な言葉中から「この世界を赤ちゃんにやさしい場所にする」というキーワードを使うことにしました。

永井:当時はいわゆるキャッシュフロー経営を重視されていたと伺いました。

北澤:その頃の当社は、経営は安定し、社員の給料も上げることができていました。一方で、その当時は、30代の退職者が増えていた時期でもありました。まさにこれからという時期に辞められてしまうことは、会社にとって大きな損失です。社内をもっとまとめる必要性を感じ、パーパスを利用して方向性を明確することができれば、それに沿ってみんな動いてくれるのではないかと考えたんです。つまり、対外的な見え方というよりも、社内をまとめていくためにパーパスが必要だったということです。

ピジョン株式会社 代表執行役社長 北澤憲政氏
ピジョン株式会社 代表取締役社長 北澤憲政氏

永井:なるほど。ちなみに当時、会社を去っていく方の主な理由は何だったのでしょうか。

北澤:1つには、このままピジョンにいても楽しみなことがないということ。また、それなりに大きな会社になっていたこともあり、「ピジョンにいた」というキャリアがあれば、いい条件で転職できるというのもあったようです。

永井:御社は既にブランドとして高い認知度を持ち、財務状況もよく、グローバルに展開している優良企業だったと思いますが、それでも人材が去ってしまうというのは不思議ですね。

北澤:従業員の平均年収を上げるなど、できるかぎりの対策は講じたつもりですが、人が会社に求めるものは“お金”や“社会的ステータス”だけではないのでしょうね。組織としての方向性や、何を社会に還元しているかという価値のほうが重視される時代だということだと思います。

永井:贅沢な話にも聞こえますが、素晴らしいことですよね。ちなみに、以前から「愛を製品やサービスの形にして提供することによって、世界中の赤ちゃんとご家族に喜び、幸せ、そして感動をもたらすこと」というミッションを掲げていたと思いますが、それでは不十分だったのでしょうか。

北澤:存在意義(パーパス)は、より具体的にイメージできるようにすることが大切だと考えていました。ピジョンでは、乳幼児向け商品の製造・販売だけでなく保育サービスや高齢者向けの介護事業も手掛けていますが、それゆえに明快なミッションを設定しづらかったという事情もあります。そこで、「この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」と宣言したほうが、従業員としても動きやすくなるだろうとの狙いがありました。赤ちゃんに特化したパーパスにすることで、母乳バンクなどの活動もしっくりきます。ベビーケア事業にもっと特化していくべきだという方針で事業ポートフォリオを見直し、選択と集中をしたという訳です。

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この記事の著者

友清 哲(トモキヨ サトシ)

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