経験の場所としての空間をつくる
林さんの紹介でキーノートで登壇したのはクライン・ダイサム・アーキテクチャのアストリッド・クラインさん。クラインさんは日本をはじめ、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパの各都市の大学での講義や、デザイン・建築関係の国際会議にも招かれる建築家。これまでに、これまでに、Google、TSUTAYA、ソニー、ヴァージン・アトランティック、ナイキ、ユニクロなどのプロジェクトを手がけてきた。アストリッド・クラインさんにとって大事なものは、やはり建築空間の中でのエクスペリエンスだという。 代官山蔦屋書店のTサイトのプロジェクトでは、「ブランド・エクスペリエンス」について取り組んだ。
TUTAYAの増田社長からは、全体の建物をパッケージのようにして欲しいといわれました。狙いは、コンテンツやサービスが溶けこんで、ひとつのパッケージとしての空間をつくることでした。そこで考えたのは、建物にサイネージするのではなく、空間そのものをサインにするということ。人間は、人間が集まるのを見るのが好きです。カフェテラスで人が集まっている、そのこと自体がサインになるのです。
Tサイトの外観は、離れて見るとTに見えるが、とくにそれに気づかなくても別に良い。代官山という街の蔦屋書店は、プレミアムエイジという人たちが訪れる。彼らは、単にファッショナブルで格好良いだけのものはもう散々見てきた世代だ。むしろ彼らが自分の家にいるような居心地の良い空間がほしい。そのために、商業施設にありがちのマネキンやポスター、サインを極力なくし、経年変化のある木材を用いた。