良い顧客体験を作るはずのDXが失敗に終わる理由
金融DXを進めるにあたり、顧客との主要なタッチポイントといえば、やはり現在ではスマホアプリである。多くの企業のスマホアプリを作ってきた経験から、海保氏は「こんなことはないですか?」と、よくある失敗例を投げかけた。
例えば、以下のような内容だ。
- 競合他社の後追いで機能を決めた結果、自社ユーザーには使われない機能が多くなってしまう。
- ユーザー登録が難しく、各種サービスの利用までユーザーが到達できない。
- メールと連携してプッシュ通知をたくさん送ったけれど開封率が伸びない。
- アプリで読めるニュース記事をたくさん作ったのに、読まれない。
DXを行う時に重要なのはより良い顧客体験を作ることである。しかし、こういった失敗の結果、アプリがダウンロードされても、しばらくするとユーザーに使われなくなってしまうなどといったことはよくあるという。使われなくなってしまうのでは意味がない。
失敗に終わってしまうのは、ビジネスのスピードが速く不確定要素が多い中で要件定義を行わなければいけないからである。また、機能面だけではなくUI要素もユーザーのアプリ利用には大きな影響をもたらすが、UIは実際に作って、使い勝手や手触りを確かめないと感覚的にはわからない。さらに、アップルやAndroidのアプリ審査に通るかどうかは、申請を出してみないとわからない。こういったことが良い顧客体験を作る上で足かせとなっている。
ではどうしたらいいか。全機能を最初に細かく漏れなく定義し、決まった期間で完成させるといった、従来のものづくりのやり方では上手くいかない。開発の進め方そのものを変える必要があると、海保氏は話す。