金融、電力、スマートシティ フォアキャストで進むQX
高橋:未来を先取りすることで、その分野の知見やアイデアも集まってくるというわけですね。前回、住友商事の事業の延長戦上で考える連続的な発想と、量子コンピューティングの未来から考える非連続な発想と2つあるとお話されていましたが、事業の延長線上で発想している事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。
寺部:たとえば、当社グループのベルメゾンロジスコという物流倉庫で人員配置を最適化した事例があります。
その他、電力分野では、これから風力や太陽光などの再生エネルギーが増えることが予想されています。ただ、風力発電や太陽光発電は天候に大きく左右されるので、電力の需給をうまくバランスさせる必要があります。弊社では、水素やEVバッテリーに電力を貯めたりする事業にも取り組んでいますが、それらの事業で需要サイド、供給サイド、蓄電サイドそれぞれのノード数が増加していくと、リアルタイムの需給調整は大変難しくなります。そこで、リアルタイムの需給調整を量子コンピューティングで実現できないかという議論もしています。
また、スマートシティやサスティナブルシティに関しての取り組みも行っています。住友商事では、北ハノイなど様々なスマートシティの取り組みに参画しています。こういった都市は10~20年かけて作るのですが、20年後に完成する都市を現在の最新テクノロジーでデザインしてしまうと、20年後には少し古びてしまう可能性があります。そのため、20年後に実用化されているであろう量子コンピューティングを前提にした街づくりとはどんな姿なのかを検討しています。これを“Quantum Ready”な街づくりと名付けています。
さらに、この街の人々と一緒に量子コンピューティングを使った住みよい街づくり、街のアプリケーションやサービスを考える「量子リビングラボ」の設置という構想もしています。