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DXの次のパラダイムシフト「QX」

QXで日本発の世界を変える産業を生み出す──未来を切り拓く「VEP-Cycle」とは?

第1回 ゲスト:住友商事 QXプロジェクト 寺部雅能氏、蓮村俊彰氏(後編)

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QX実現の近道となる「VEP-Cycle」とは

高橋:QXプロジェクトを立ち上げるにあたってキーになっているのが「VEP-Cycle」だと伺っています。これはどのような考え方なのでしょうか。

蓮村俊彰氏(以下、敬称略):VEP-Cycleとは「Vision」「Ecosystem」「PoC/PoB」を回転させながら前に進んでいくことが、結果として、ありたい未来を最短で創造できるという考え方です。まずは、“ありたい未来像”を描きます(Vision)。そしてそれに共感する仲間たちを見出し、リレーションを紡ぎ、有機的なネットワークを共に築きます(Ecosystem)。そして仲間たちと様々な仮説に基づく実証実験(PoC)や、その先の事業実証(PoB)を繰り返し、ビジネスや社会変化の有りようを切り拓いていきます。

「VEP-Cycle」
「VEP-Cycle」(出典:https://www.quantumtransformation.world/strategy
クリックすると拡大します

 QXの実現には、このサイクルを回すことが重要だと考えています。

VEP-Cycleによるアプローチイメージ
VEP-Cycleによるアプローチイメージ(出典:https://www.quantumtransformation.world/strategy
クリックすると拡大します

 寺部さんが入社する少し前に寺部さんと大関真之教授との共著『量子コンピュータが変える未来』を読みました。執筆当時、今ほど盛り上がってない量子業界で、実装に向けて頑張っている人たちをインタビューした事例が描かれていました。周りの人も巻き込んで一緒に業界を広げていこうとする寺部さんの発信にとても心を打たれました。

 量子コンピュータのような長期視点で大きなパラダイムシフトを起こすテーマでは、VEP-Cycleを回すことが成功に向けた一番の近道なのだろうと確信しています。

住友商事株式会社 デジタル事業本部 新事業投資部 部長代理/QXプロジェクト プロジェクトデザイン・クリエイティブ統括 蓮村俊彰氏
住友商事株式会社 デジタル事業本部 新事業投資部 部長代理/QXプロジェクト プロジェクトデザイン・クリエイティブ統括/東北大学大学院情報科学研究科 特任准教授(客員) 蓮村俊彰氏

高橋:今日・明日の利益にはならないかもしれないが、未来への取り組みを継続するために必要な考え方ですよね。

蓮村前回寺部さんがお話したように、量子アニーリングのアルゴリズムや超伝導の量子ビットを発明したのは日本人なんですよね。そういった発明をビジネスにブリッジできる部分を強化していきたいと考えています。

 話が少しずれるかもしれませんが、私は8歳と5歳の子供がいます。この年齢の子供がいると、「この子たちが大きくなる頃、この国は何の産業でご飯を食べているのだろうか」と考えるときがあります。その際希望を持てるのが、量子コンピュータによる新産業創造です。

 住友商事には、「企画の遠大性」という社是のような言葉があります。約400年の昔より「すぐに結果が出なくても次代・三代にわたって事業を開花させるよう努力を続ける」という考え方を住友のリーダーは共通して持っています。そのような目線を持った企業と、腰を据えて取り組むべき量子コンピュータは、相性も良いのではないかと感じます。

高橋:今おっしゃったように、量子コンピュータは時間軸の長い取り組みだと思うのですが、協業する他の企業が「もっと早く成果がほしい」となった場合はどうしているのでしょうか。

寺部:基本的には長期の視点を持って取り組む必要がありますし、量子コンピュータのハードウェアに関しては、まだまだ開発に時間がかかりますとお伝えします。ただ、量子を模擬して普通のコンピュータを使って効果を出そうとする「量子インスパイアード」の研究や、普通のコンピュータと量子コンピュータ組み合わせて行う「量子ハイブリッド」の研究は、現在急速に進んでいます。私たちも、先ほどご紹介したベルメゾンロジスコの物流倉庫で実施した人員配置の最適化にこういった量子インスパイアードの技術を利用しました。目の前で効率化の果実を得つつ、未来にさらなる大きな果実が期待できるという、短期と長期のプロダクトマップを描くことで、様々な企業が参画しやすくなると考えて取り組みました。

蓮村:Quantum Transformation(QX)というコンセプトは、寺部さんが提唱しているものです。国際会議でも度々発信しておりますが、既に海外の産業界からも色々な問い合わせがあります。これまで、日本が世界に発信してきた技術は多いと思いますが、コンセプトから世界に向けて発信するのは久しぶりだと感じます。

 20世紀後半より、デジタル化の重要性が叫ばれ始めた際、日本の多くの企業は潮流に乗り遅れ、GAFAMを筆頭とする企業群の後塵を拝することになってしまいました。しかしウォークマンやカップヌードルなど、世界を変えた日本の「コンセプト×商品」のように、このQXでは、日本から世界に発信できる強い産業を生み出せる可能性があると考えています。この記事を読んでくださった方々とも、ぜひ一緒に探究していけたらと思っています。

高橋:本日はありがとうございました。次回以降は実際に量子コンピュータを活用した取り組みを進めている企業にお話を伺っていこうと思います。

株式会社ビザスク 事業法人部 事業開発第一チーム 事業開発担当 高橋沙織氏
株式会社ビザスク 法人事業部 事業開発第一チーム 事業開発担当 高橋沙織氏

前編「住友商事 寺部氏・蓮村氏が語る、DXの次のパラダイムシフト「QX」──量子コンピュータで世界を変える

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この記事の著者

佐藤 友美(サトウ ユミ)

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