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八子知礼の「DXの本質」

INDUSTRIAL-X八子氏が語る、社会や産業構造の変革からバックキャストする実践的DXとは?

ゲスト:株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役CEO 八子知礼(やこ とものり)氏【前編】

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 経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」を選定・発表するなど、DXの重要性は浸透しつつある。しかし、DXの本当の目的、本当に向かうべき姿を意識できているだろうか。2022年3月に『DX CX SX ―― 挑戦するすべての企業に爆発的な成長をもたらす経営の思考法 ――』(以降、『DX CX SX』)を上梓した株式会社INDUSTRIAL-X代表の八子知礼(やこ とものり)氏は、DXとは、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)を経て、SX(ソーシャル・トランスフォーメーション)を実現するものだと主張する。その意図や実践的な取り組み方に関して、編集部が聞いた。

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社会の変化を見据えてバックキャストする「DX論」

──3月に上梓された『DX CX SX』では、独自のDX論を掲げられています。その背景からお聞きできますか。

八子知礼氏(以下、八子):書籍を執筆した動機、もっといえば現在のビジネスをしているモチベーションが2つあります。それは、日本が高度経済成長期以降に失ってしまった変革マインドとスピードを取り戻すこと、人口減少などにより想定できる国家の衰退に対して一助になることです。

 日本の人口は2045年には1億600万人程度になると推計[1]されています。この数値は1970年代と同規模の人口であり、無策であれば経済規模もそれに近しいものに落ち込む可能性があります。

 「失われた30年を取り戻すこと」と「衰退に対しての策を打つこと」の両方を同時に行わなければならない。これが日本社会や日本企業の置かれているリアルな状況なのです。

──日本の産業構造は今までどのような状態にあり、現在どのように厳しい状況にあるのでしょうか。

八子:日本の産業構造を考えると、全産業のうち、ものづくり産業が非常に大きな割合を占めており、それが今惨憺たる状況にあります。

 日本の基幹産業で、関連産業を含めると国内就業人口の8.1%[2]を占める自動車産業も、将来的には同じ道筋を辿るであろうと予測されています。特に今後20年で急激に普及が進むEV車は、必要な部品点数が大幅に減り、それに携わっている産業は確実に仕事が減ります。それは予測できていることです。

──著書でDXは、CX(コーポレート・トランスフォーメーション:企業変革)を通じて、SX(ソーシャル・トランスフォーメーション:社会変革)を実現するものであるとされています。それは、よりよい社会や産業構造をイメージし、バックキャストしながら企業を変え、デジタル変革を行うことだと思います。まず、SXをどのようなものだと捉えているのか。その点をお聞かせください。

八子:ものづくり企業に大きな影響を与える要因の1つは、「カーボンニュートラル対応への圧力」です。企業は、材料調達から自社工場、取引先を含むサプライチェーン上でのCO2排出量を計測・評価・モニタリングをしなければなりません。そして2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂、2022年4月の東京証券取引所の新市場区分見直しの影響もあります。これは気候変動に関する活動の開示を実質的に義務付けたものです。「ESGスコア」(第三者評価機関による企業のESGにおけるパフォーマンスやリスクを測定・算出した指標)の開示などが代表的なものになります。機関投資家などの株主は、企業にカーボンニュートラル対応を今後より厳しく求めていくでしょう。

 また、もう1つの予測される大きな変化が「業界間の境目の融合」です。今後、自動運転が本格的に実装される時代になると、車両にコンビニ店舗を乗せて必要な場所を走るサービスが生まれることも予想されます。これは自動車産業、コンビニ業界の垣根を超えたビジネスになりますよね。

 さらに自動車産業には、非自動車メーカーによる参入も相次いでいます。SONYが発表したEV「VISION-S」などが代表例です。詳細は省きますが、設計のデジタル化とモジュール化により非自動車メーカーの参入が容易になってきています。


[1]経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」(P3、2018年)

[2]一般社団法人日本自動車工業会「日本の自動車工業 2020」(P5、2020年8月)

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この記事の著者

フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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