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BizDev for DX

全社員が同じデータで対話し、ミッションとプロダクトに熱狂する──アドビ西山氏に聞く、SaaS経営とは

ゲスト:アドビ株式会社 CDO(Chief Digital Officer)西山正一氏

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 DXは単なるデータ化、デジタル化のフェーズを超え、組織として、経営としてどう変わるかのフェーズに差し掛かっている。この連載では、先駆的企業のキーマンにインタビュー。DXを進める中で求められる変化、それに伴う困難をどう克服したかを聞く。ゲストは、アドビ株式会社 CDO(Chief Digital Officer)西山正一氏。2012年にサブスクリプション型サービスであるCreative Cloud(CC)をリリースし、他企業に先駆けてサブスク化に踏み切った同社の変革プロセスを振り返ってもらった。

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サブスク化以外に“生き残る道”はなかった

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アドビ株式会社 CDO(Chief Digital Officer)西山正一氏
2001年にアドビ システムズ株式会社(現アドビ株式会社)マーケティング本部に入社。Web製作アプリケーションやDTPアプリケーションの製品担当を経たのち、Creative Cloudのマーケティングを担当、サブスクリプション移行期をマーケティングの立場で携わる。2017年6月に営業部に異動し、営業戦略部(現DX 推進本部)の立ち上げに携わる。現在はアドビの直販ビジネスおよび販売戦略立案の責任者として、アドビのDX製品をフル活用してeCommerce事業の推進に努めている。

──今から約10年前、御社が他社に先駆けてサブスクリプション型のビジネスに転換した経緯から教えてください。

 それまでCreative Suite(CS)というパッケージ売りのビジネスモデルだったアドビが、サブスクリプション型のサービスであるCreative Cloud(CC)をリリースしたのは、2012年のことです。なぜ我々はサブスクに転換しなければならなかったのか。そこには明確な理由がありました。

 リーマン・ショックというキーワードに加えて、大きかったのはスマートフォンへの急激なシフトです。当時のアドビにとっての大きな事業の柱であったAdobe Flash を主軸としたビジネスが、スマートフォンの登場、具体的に言えばiPhoneにAdobe Flash Playerが載らないという判断が行われたことにより、突然成り立たなくなったのです。

 この判断によって転換を迫られたのは当然のことながら我々だけではありません。世界中で、例えばW3CなどのWebの最先端にいる人たちの間で、従来のWebアプリケーションをiPhone上で使うためのFlashに替わる手段について、急ピッチで議論が交わされることになりました。その中で誕生したのがHTML5という当時まだ存在しない新しい規格です。

 アドビとしてはツールベンダーとしてこうした流れについていかないわけにはいきません。ですが、当時の我々のリリースサイクルでは、新機能の開発には1年半〜2年を要していました。そのスピード感では、いくら最新のトレンドを反映させた機能を追加しても、世の中の変化についていけなくなりつつありました。

 また、これまで通りのパッケージ売りのモデルですと、新機能をリリースするたびに別途対価をもらわなければならないという、財務上のルールがあります。パッケージで売りつつ、後から新機能を追加提供するという動きができないのには、開発スピード以外に財務上のルールという事情もありました。

 これらのジレンマを抱えた中で、それでも新機能をスピーディに追加し、お客様に使っていただけるようにするのに我々に残された選択肢は、製品の売り切りモデルからサービス化、つまりサブスクリプション化への転換だったのです。

──「サブスクを試してみよう」といった温度感ではなく、外部要因的に、そうせざるを得なかったと。

 そうです。生き残るためには、サブスクに経営リソースを全集中させる以外になかったのです。「このままでは滅びてしまう」という危機感は、現場の我々も経営層も同じように持っていましたから、CS5.5をリリースした直後のタイミングで、サービス化へと大きく舵を切ることになったわけです。

 そこからは全社をあげて「サブスクとはなんぞや」ということを追求していきました。その結果として、マーケティング手法やお客様とのエンゲージメント、経営管理のKPIも全てが変わることを余儀なくされました。

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この記事の著者

鈴木 陸夫(スズキ アツオ)

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