事業環境の変化から“退いてもらいたい人”にはどう対応するのか
後藤宗明氏(以下、後藤):引き続き配置についての話を伺いたいのですが、育成のために全く違う仕事に異動させるときは、本人の希望を考慮しているんでしょうか。
曽和利光氏(以下、曽和):リクルートでは社内転職制度という本人主導の異動の制度もありましたが、育成のためのローテーションに関しては会社主導でやることが多かったですね。
後藤:本人が「え?」と驚くような異動を命じられた場合は「期待をかけられているんだな」と認識できるわけですか。
曽和:当時はエリートコースを作りたくないという思想が強かったので、「お前に期待をかけているから、こういう配置をするんだ」とオフィシャルに言うことはなかったです。ただ、上司や入社の時から付き合いのある採用担当などがメンター役になり、インフォーマルなサポートをすることはよくありました。
僕も「曽和さん、僕、こんな異動をすることになりました」とか「地方に飛ばされました」と相談されて、「地方に行くっていうことは今よりひとつ上の仕事ができるということだよ。次のマネージャー候補として期待されてるんだろう」みたいなことを言ったりしていました。
後藤:世の中では「役職定年制」を導入する会社が増えていますが、僕はすごく弊害を感じるんですよね。それまで上司だった人が若手の下についてストレスを感じ、若手も意識的に威厳を示そうとして関係がギクシャクしてしまうようなことがあちこちで起きているように思います。でも、解雇しないためにはそうせざるを得ないような気もしていて。
リクルートでは、後進に道を譲って欲しいというような人には、どうアプローチしていたんですか。
曽和:一方的に異動させたり辞めさせたりということはせず、退いてもらいたい人には、めちゃくちゃ丁寧なコミュニケーションをしていました。有力者が辞めると下の人も動揺して辞めていったりするというケースが、よくあるじゃないですか。そういうことがないように、「今こういう展開で、事業が変わっていく上では別の人に入ってもらいたいと思っている。つきましては、そこを空けてくれませんか。あなたには別のポジションを用意したい。それについてちょっと話し合いませんか」と、かなり丁寧に話をしていましたね。