スタートアップと対等に付き合うには強い意志が必要
中垣徹二郎氏(以下、中垣):39worksを始めてから、何か新しい事業が立ち上がるといった分かりやすい結果が出るまでに、どのくらいの時間がかかりましたか。
笹原優子氏(以下、笹原):分かりやすいところだと、複合現実製作所という社内ベンチャーが立ち上がったのが2020年です。39worksを始めて7年目ですね。
中垣:徐々に進捗はしていたにしても、長い期間でしたね。3〜4年でジョブローテーションがあってもおかしくない中で、いかに社内で応援をしつづけてもらうかが、かなり重要なことだったと思います。社内の色々な人たちに活動の内容を発信されつづけたことが大きいのでしょうね。
笹原:そうですね。2017年に始めた新規事業創出のコンテストが、翌年のR&Dの本部長表彰に選ばれたのも大きかったです。R&D部門でこういうことが表彰されるのは珍しいと思いますが、社内でのプレゼンスを上げるきっかけになりました。社内評価ばかり気にすると本質から外れますが、期待してもらえるのはいいことだし、実行している社員と参加している社員の希望にもなりますから。
──ドコモ・ベンチャーズに出向していたときは、ドコモ社内でアイデアがある人とスタートアップとをつなぐことが主な役割だったのですよね。ドコモに戻られて、活動の目的が変化したのでしょうか。
笹原:ドコモ・ベンチャーズにいたときは、スタートアップに出資するというよりは業務委託契約のような形でやっていたんです。そうすると、どうしても委託元と委託先のような上下関係が生まれ、本来やりたかったオープンイノベーションの良さを活かしたプログラムになりづらかったんですよね。
また、スタートアップの方たちが強い意志をもってやっているのと比べ、ドコモの社員はそれが少し弱いところがありました。意志を強くもってやらないと対等な関係は築けないですから、社内の人たちの軸をしっかり強くするために本体に戻してもらいました。
中垣:社員の方たちの育成に力を入れることにしたんですね。
笹原:はい。iモードをやっていた頃は、携帯電話の進化の前にパソコンとインターネットの進化があったのと、iモードのビジネスコンセプトがはっきりしていたので、向かう先がしっかり見えていました。「私たちはこれがやりたいです」とちゃんと言えたので、強い意志をもっているスタートアップの皆さんとも対等に会話ができて、すごくやりやすかったんです。あの状態を目指しました。
──iモードの原体験が大きいんですね。
笹原:そうです。自分が経験したことを、みんなにも経験してもらわないと、という気持ちが大きいです。