デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(以下、DTFA)とIPwe Japanは、特許の金銭的価値を可視化し資産価値に注目したアドバイザリーサービス提供のための、包括的な協業に関する契約を締結した。
これにより、DTFAとIPwe Japanは協力して、知的財産の観点から企業価値向上に貢献するためのサービスを拡充していくと述べている。
DTFAはこれまで、財務諸表に記載する無形資産価値の評価のほか、買収・出資に伴う交渉や内部意思決定を目的とする特許価値評価のニーズに対し、経営判断に資する特許のデューデリジェンスや金銭的価値を評価するサービスを提供してきた。
IPwe Japanの母体である米国IPweは、これまでAIとブロックチェーン技術をベースに知的財産の金銭的評価、管理、取引する包括的なSaaSソリューション「Smart Intangible Asset Management(以下、SIAM)」を開発。SIAMでは、独自のAI技術や信頼性の高い複数ソースから入手したデータをもとに、すべての特許についてリアルタイムの金銭的価値評価や、特許・業界・ポートフォリオ単位での財務評価を行うことなどが可能だとしている。
IPweのAI技術は、これまでに5億ドル以上のライセンス収入と20億ドル以上の特許資金調達を生み出してきた実績を有しているという。
今回の協業に基づきDTFAは、IPweが開発したSIAMによる知的財産の金銭的価値評価や、SIAM上で運営されている特許取引市場で行われる取引に対し、DTFAがこれまで知財取引の中で培ってきた知見をもとに、知的財産アドバイザリーを行うと述べている。
金銭的価値評価から売却まで一気通貫で支援し、知的財産の観点から企業価値向上に貢献するためのアドバイザリーサービスを強化していくという。
協業により解決していく課題例
コーポレートガバナンス・コード改定に伴う知財情報の開示
これまでは引用・被引用数などの注目度や権利範囲の広さを評価する特許独自の指標しかなかったため、経営とのつながりを認識しにくかった特許の価値を、金銭的な価値で評価できるようになり、投資家・金融機関に対して、自社の知財ポートフォリオの強みや知財戦略のパフォーマンスを、具体的な金額を用いて効果的、かつ客観的に伝えることが可能。
保有特許ポートフォリオの最適化
自社の保有特許について、今後も特許の維持年金を支払って保有し続ける価値があるのか、特定業界ごとに保有特許ポートフォリオの過不足がないか、どうすれば特許のポートフォリオの価値を上げることができるかなど、特許管理者の主観評価のみに頼ることなく、金銭的価値評価に基づいて客観的に判断できるようになる。
未活用特許の活用支援
従来、放棄か放置の措置しか講じることができなかった自社で活用できていない特許について、SIAM上で運営されている特許取引市場に出品するという選択肢が取れるようになることで、売却あるいはライセンスできる機会を創出できるようになる。
SIAMの特徴
- 動的な特許NFTと独自のAIアルゴリズムを利用して知的財産データを統合し、すべての特許についてリアルタイムの金銭的価値を評価できるとともに、特許ポートフォリオの質や有効性、価値を分析して企業価値向上に役立つ指標を生成することが可能
- Clarivate社の特許データベースへの独自のAPIアクセス、IFI ClaimsやFactSetなどの複数のプロバイダーから直接入手したデータ、および独自に収集した特許データに基づき、ビジネスインサイトを提供することが可能
- 金銭的価値が評価された特許について、その特許を売却またはライセンス供与したい場合は、SIAM上で運営されている特許市場に出品することが可能
- SIAM上で特許取引が完了したものについては、取引履歴がブロックチェーンに記録されることにより、確実に権利者の最新情報が記録されるため、取引リスクおよびそのリスクを低減するためのチェックにかかるコストを削減することが可能