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実践フェーズの人的資本経営

しずおかFGの人的資本経営が目指す、個々の行動と経営戦略の一致──フラットな風土と階層構造の両立とは

【第5回・後編】ゲスト:株式会社しずおかフィナンシャルグループ/株式会社静岡銀行 藤島秀幸氏

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 前編では、Uniposの田中弦氏がしずおかフィナンシャルグループの人的資本開示について、その背景や意図を、同社の経営企画部長であり人的資本経営委員会 副議長を務める藤島秀幸氏に伺った。従来の銀行の枠を超えて社会的価値を提供していくために、それを実現できる人財の育成や、彼ら彼女らの能力が発揮できる文化の醸成を後押ししていこうという考え方が語られた前編に続き、後編ではグループの重要な経営基盤であり人的資本経営の根幹となる地域課題の話から取り組みを深掘りしていく。

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人的資本経営の根幹にある社会・業界・地域の課題

田中弦氏(以下、敬称略):人的資本経営とは、経営目標・戦略を“人で解く”経営手法であり、その背景には業界や社会が抱える課題があるかと思います。しずおかフィナンシャルグループが抱えている課題認識を教えてください。

藤島秀幸氏(以下、敬称略):まずは、世の中が抱えている課題です。日本全体で見れば、経済合理性のみに着目してきた結果、所得水準が伸びず、経済成長も停滞している現状があります。アジアや世界の国々に比べ、新しい産業もイノベーションも生まれていません。個々の企業が自社の利益を追求することは、もちろん非常に大切ですが、もう少し経営のやり方を変えなければ世界から取り残されてしまいます。

 次に、金融業界が抱える課題です。マイナス金利や新たな金融政策の中で、従来のビジネスモデルが崩壊してきています。最近は利上げの観測もあり、多少復活の可能性はあるかもしれませんが、やはり新しい事業領域には打って出なければいけないと感じています。そうなれば、必然的に新しい考えや行動、価値観が必要になりますよね。

田中:さらに地方銀行となれば、密接に関わる地域の課題もありますよね。

藤島:おっしゃる通りです。静岡県では人口減少が物凄い勢いで加速し、人手不足が顕著となっています。たとえば、伊豆半島などが属する東部地区では観光業が非常に盛んで、ホテルや旅館の予約がコロナ禍以前の水準まで復活していますが、人手が足りずオペレーションが回せない状況に陥っているという声を多く耳にします。近年では観光業に限らず、飲食や小売業界、製造業や建設業でも同様のことが起こり始めています。

 このような話をすると、「人口減少はどこの地方でも一緒でしょう」という声をいただくことがあります。しかし、一概にそうとは言えません。たとえば福岡県では、九州の中でも非常に人口が集中してきていますし、熊本県では台湾の世界的な半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)の進出で所得水準が上がり、就労人口も増えてきています。

 静岡県では、現状そういったポジティブな変化は起こっていません。そして、決定的な違いは女性の人口比率の動向です。例に出した九州では、全域で女性の人口が男性より1割ほど多いです。静岡はその逆で、バブル期の1990年過ぎあたりから、若年女性の著しい都心への流出が起こっています。これは非常に大きな問題です。

田中:そんな課題があったとは知りませんでした。

藤島:そしてもう一つ、産業構造の課題があります。静岡県は、元々は「産業のデパート」と称されるほど多種多様な産業が集積し、経済的にも豊かな地域でした。その中でも、特に経済を牽引してきたのが、自動車を中心とした輸送機製造業です。しかしこの産業は今、EV化や脱炭素の流れの中で大きな変化を強いられており、地域の工場やメーカーは多くの課題に直面しています。

 このような状況下で我々がやるべきことは、経営基盤である地域の課題を、地域の方々と一緒に解決し、より良くしていくことです。そのために経営戦略を変え、その戦略を実現するための人事戦略を変え、ベースとなるカルチャーを整えていかなければなりません。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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