組織の中に既に存在する価値を発見し、統合するデザインの力
岩嵜:この連載では、様々なデザイン組織を取材してきたんですが、三澤さんのいう「開拓」のような活動をデザイン組織が担っているケースがいくつもありましたね。日立製作所はR&D部門の中にデザイン組織を設けて、デザインのアプローチで社会の変化の兆しを捉えようとしていましたし、NTTコミュニケーションズのデザイン組織「KOEL」はフィールドワークなどを通じて50年後の働き方や仕事のあり方を洞察する活動をしていました。大企業の中にも新たな価値を探索するためにデザインを活用する例もあるんですよね。
三澤:デザインやデザイナーの強みは、行動や出来事を抽象化して捉えられることですよね。組織内に潜んでいるミクロな可能性みたいなものをすくい上げて、新たな価値として意味づけできるというか。それはプロジェクトを立ち上げるプロセスにも似ていると思います。デザイナーは普段の行動や日常会話の中にある兆しのようなものを捉えて、「こういうことをやったら面白いんじゃないか」とか「私たちはこんなことができるんじゃないか」と提起できる。それはプロジェクトの種になると思うし、組織が新たな領域に進むための原動力になり得ると思います。