みずほリサーチ&テクノロジーズおよびパナリットは、製造業における人的資本情報の可視化に向け、「人的資本の可視化に関する協働研究」(2022年12月~2023年5月)を実施した。
人的資本経営には、「実践」と「可視化・開示」の両輪で取り組む必要があるが、人的データの散在や一元化問題、指標の仮説構築力などの課題もあり「可視化」には一定の知見と経験の蓄積が企業・社会に求められているとのこと。そこで同協働研究では、パナリットの開発した「人材諸表」を活用しながら、以下4つのステップで製造業における人的資本情報の可視化に取り組んだという。
当該企業は従業員数約10,000名の製造業であり、今後複数年度にかけて解決すべき課題として、「人材獲得」「人材流動性」「シニア人材活用」など複数の重点課題を設定していた。限られた時間の中でこれらの課題に関連する人的資本情報をすべて可視化することは困難であり、同協働研究では「成長事業へのポートフォリオシフトにおける人材の流動性の実態を明らかにすること」が同社の経営戦略との連動性を検討する上で示唆を与えうるものと考え、協働研究の目標として設定したとしている。
人的データの可視化に際しては、データ収集・統合・処理(クレンジング)・蓄積・可視化というプロセスを順番に行う必要がある。対象組織の規模が大きい場合や、可視化すべき指標の種類数が多い場合、また元データの精度や完全性が低い場合には、半年〜1年以上かかることもあるが、同研究においてはパナリットのシステムを活用することにより、データ可視化に到るまでのプロセスを約1ヵ月で実現できたという。
同協働研究では、主に以下の点について可視化を実現したとしている。
- 組織再編後、収益事業から成長事業への異動量について、全従業員割合に対しての増加幅を部門ごとの異動内訳に加えて外部入退職の要因含めて構造的に把握できたこと
- 成長事業への人材流動化について、性別や勤続年数、年代などで見た場合、他の異動パターンと比較して大きな傾向差が生じていないことが確認されたこと
- ある異動パターンでは、管理職以上の含有率や高評価者の含有率が、他の異動パターンと比較して高かったことが判明したこと