不動産ビッグデータを活用した「空き家対策支援」
不動産ビッグデータを活用した行政との取り組みもある。
2018年の統計では全国に850万戸もの空き家があるとされている。空き家というと地方の問題のように感じるが、実際には首都圏に集中している。空き家発生率自体は地方の方が高くても、首都圏は母数となる住戸数が多いからだ。2019年に放送されたNHKの「クローズアップ現代」では、空き家活用株式会社が5,000戸もの“埋もれた空室”を発見したとされていたが、空き家を一戸ずつ訪ね、母屋の状態や電気水道メーターをチェックするという地道な特定作業が必要なため、実態把握は困難である。
目視調査は人的・時間的コストがかかる方法ではあるものの、比較的間違いが少ない調査方法として、多くの自治体で実施されている。しかし、膨大な数に上ることが予想される空き家をしらみつぶしに全量検査することは現実的ではない。そこでLIFULLは、将来人口動態予測AI「MiraiE.ai」を手がけるマイクロベース株式会社と協業し、愛知県豊田市で、現在から将来までの空き家発生率、あるいは一度空き家になったものに再入居する率をAIで予測し、将来空き家予測データを作成した。
自治体が保有する登記台帳・住民基本台帳・水道使用料・空き家調査実績といった基礎データと地図情報に加え、LIFULLの持つ不動産ビッグデータを入力することで、AIの予測精度を向上させることができる。これによって、しらみつぶしに空き家調査を行うのではなく、優先度の高い物件から調査をすることが可能になる。実際に空き家が予測され、再入居が見込めない物件に対しては、住宅セーフティーネット制度という登録住宅の改修支援と入居者の負担軽減支援を行うことで空き家を解消していく国土交通省の制度を活用したり、状態が悪い物件は危険な状態になる前に除去等の手続きを進めていったりすることが可能になる。
空き家に関しては国土交通省が「空き家・空き地バンク」を作っており、LIFULLは同省の「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に採択され、「LIFULL HOME'S 空き家バンク」を運営している。正確な空き家データベースの作成に並行して将来空き家予測データを作ることには意味がある。この発想は、空き家対策だけではなく、水道等のインフラ施設や地域活性におけるプランニングにおいても流用可能な考え方ではないかと内田氏は指摘する。