100年以上に渡って「自己変革」を続けてきたテルモ
紺野登氏(以下、敬称略):テルモは1921年に体温計の国産化を目指して創業し、以来100年以上に渡って数々の製品を生み出してきました。近年では、2022年に注射器や輸液ポンプなどを扱っていた「ホスピタルカンパニー」を、「メディカルケアソリューションズカンパニー(TMCS)」に改称し、個別のデバイス製品・サービスに留まらない価値提供を目指されています。
長年、自己変革を続けてきたテルモが、今後どのようなイノベーションを志向し、そのためにどのような経営の仕組みづくりに取り組むのかは、多くの企業が注目しているはずです。そこで、まずは今年4月に就任されたばかりの鮫島さんのご経歴をお聞きします。
鮫島光氏(以下、敬称略):私は2002年にテルモにキャリア入社し、最初の数年間は経営企画室でクロスボーダーのM&Aなどを担当しました。その後、心臓血管カンパニーに移り、2017年の心臓血管カンパニープレジデント就任を経て、2020年から4年間、ホスピタルカンパニー(現メディカルケアソリューションズカンパニー)のプレジデントを務めました。
この異動は、当時の私にとっては晴天の霹靂でした。ホスピタルカンパニーは、血管内治療や心臓外科手術の先端テクノロジーなどを扱う心臓血管カンパニーに比べて、やや旧来的でビジネス機会が少ないのでは、という先入観を持っていました。ただ、それは杞憂でしかなく、ホスピタルカンパニーでの経験は、むしろテルモのコアとなるアセットや事業基盤を見つめ直すよい機会になりました。テルモの歴史やビジネスのポテンシャルを見つめ直した4年間といえます。
そして、2024年4月に佐藤慎次郎前社長の後を受けて社長CEOに就任しました。
紺野:テルモのような伝統的な大企業のトップは、自社の歴史を引き受け、未来に向けて組織を導いていく役割もあると思います。鮫島さんは、テルモのこれまでの歴史をどのように捉え、現在がどのような地点にあるとお考えなのでしょうか。
鮫島:いくつかの観点があると思いますが、まずは医療機器産業における伝統的な部分と医療の進化とのギャップが広がりつつある時代だと考えています。
紺野:伝統的な医療機器と医療の進化とのギャップですか?