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人間が主役のデータインフォームド経営とは

KKD(勘・経験・度胸)とデータの掛け算がビジネスで最強な理由──データインフォームドアプローチとは

第1回

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データドリブンアプローチは人の存在を蔑ろにしてきたのか

 「データドリブン(Data Driven)」という言葉があります。日本語に翻訳すると「データ駆動」です。字義通りにとらえれば、「データによって、自動的に物事が次々と進んでいく、駆動されていく」という意味になります。

 これに対して、「データインフォームド(Data Informed)」という言葉があります。これは「データによって(人が)情報を与えられる」ことを指します。つまり、「情報を与えられた人間が、物事を推し進めていく」わけです。データドリブンの主体がデータであるのに対して、データインフォームドの主体は人間なのです。

 元来、データドリブンという言葉には、「データによって自動的に物事が決まる」「データによって一意に答えが導かれる」といった明確な意図は含まれていません。データを用いて考える、データを用いて意思決定をすることを指し示していました。

 しかしながら、この言葉が広く使われていくようになるのに合わせて、テクノロジーが進化し、大量データをインプットにして各種アルゴリズムや機械学習モデルを活用して自動的に条件判定を行い、それに基づいた処理を実行することが当たり前になってきました。

 そうした「データによる自動的な判定処理」と「データドリブン」を同じものだと誤解する人が増えていったように私は感じています。

 このような状況を踏まえ、私は、直近では「データインフォームド」という言葉を意識的に用いるようにしています。また、私の所属する株式会社ギックスにおいても、パーパス(会社の存在目的)として「あらゆる判断を、Data-Informedに。」を掲げています。この言葉を用いているのは、「人が判断・意思決定の主体であって欲しい」という考え方に基づいています。

データによって、人の力を強化する

 あらためてデータインフォームド(Data Informed)という言葉を整理しましょう。これは「データから自動的に答えが導き出せる」というデータドリブン(Data Driven)という考え方ではなく、「データによって判断者である人間の思考が強化される」という考え方です。

 ご存じの通り、機械学習、ディープラーニング、AIなど「機械によるデータ処理」を表現する言葉はたくさんあります。そして当然ながら、機械による判断が適しているシチュエーションも数多くあります。したがって、必ずしも「すべての判断に人間が介在すべきである」とまでは思いません。

 たとえば、デジタル広告の配信などの分野は、大量のデータを高速に処理する必要がありますので、人間が介在することは不可能です。ホテルや航空券のダイナミックプライシングなども、一定のルール、ロジックに基づいて、機械が自動的に処理していくべき領域でしょう。

 その一方で、顧客が求める新しいサービスを考えたり、会社の事業計画を策定したり、事業の統廃合を決めたり、社員を採用したり、人事評価を行ったりするような場合には、全てを機械に任せてしまうことはありません。もちろん、機械によって、判断材料となる情報を処理して、なんらかのリコメンドを出すことはあります。

 しかし、このように重要性が高く、年に数回などの限られた頻度でしか行われない判断は、機械任せにせず人間が決めていきます。

 データを使って、人間がより良い判断をできるようになる。これは、意思決定の一つの理想形であると私は思います。データインフォームドは、まさに、これを目指す概念だと私は捉えています。

データインフォームド
資料提供:株式会社ギックス

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この記事の著者

田中 耕比古(タナカ タガヒコ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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