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データドリブンから“withデータ”へ

「再現性が高いクリエイティブ」を生み出すためのデータ活用戦略──成功の確度を高める“3つのステップ”

第3回

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クリエイティブ分野におけるデータ活用の現状

 一部の企業では、データ分析を用いたクリエイティブの最適化や制作プロセスの効率化に成功しています。その代表的な成功事例が、大量のクリエイティブを作成・配信し、成果の高いものだけを残す「多産多死戦略」です。

 この戦略では、多くのバリエーションのクリエイティブを作成・配信し、それぞれの成果を測定することで、最も効果の高いクリエイティブを選別したり、成果の高いパターンを発見したりすることを目指します。この戦略は、Webサイトのバナー広告などのように、比較的制作コストが低く、テスト配信を数多く行えるような領域で効果を発揮しますが、クリエイティブがある程度パターン化できる場合にのみ有効です。

 多くの企業ではクリエイティブ分野でのデータ活用に苦戦しているのが現状です。データ分析の結果が実際のクリエイティブ制作に活かされないことは珍しくなく、その結果、時間やお金をかけて集めたせっかくのデータが無駄になってしまうのです。

 この問題の背景には、クリエイティブの再現性の低さがあります。つまり、過去に成功したクリエイティブの要素を分析し、それを新しいクリエイティブに適用しても、同じような結果が得られるとは限らないのです。

 データは成功の再現性を担保する役割として重要ですが、クリエイティブ分野において再現性を求めることは簡単ではありません。

クリエイティブの再現性を阻む要因

 クリエイティブの再現性を阻む大きな要因の一つが、「データと感性のズレ」です。この問題を、「興行成績の良い映画を制作する」という例で考えてみましょう。

 映画に関連するデータとしては、興行成績の他、ジャンル、上映時間、キャスト、あらすじ、登場人物などが比較的容易に収集できます。そこで、これらのデータを使って、興行成績が良かった映画の特徴の分析を行います。

 たとえば、分析の結果、興行成績上位の作品に共通する要素として、「上映時間は110分」「ストーリーは『ヒーローの旅』」「主人公は10代」などの特徴が導き出されたとします。しかし、これらの要素を踏まえて制作された映画が、本当にヒットするかどうかは保証できません。なぜなら、興行成績を形作る、映画が観客に与える「感動」や「興奮」といった“体験”をデータとして捉えることが難しいからです。

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 データは対象を客観的に測定・記述できる一方で、人の主観的な印象や体験を正確に表現することは困難です。

 人の感性に訴えかけることを重要視するクリエイティブ分野は、データだけでは捉えきれない要因が多く存在し、このデータと感性のズレが、クリエイティブの再現性を低下させる要因となっています。つまり、上述した映画の分析モデルは、データ化が難しい人の主観的な体験を無視してしまっているのです。

 このように、データ分析によって導き出されたアイデアが、必ずしも成功につながるとは限りません。クリエイティブの再現性を高めるためには、データと感性のズレを理解し、適切に対処していくことが重要となります。

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この記事の著者

岩井 大志(イワイ ダイシ)

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