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JR西日本がデジタル変革を推進できる理由──デジタル人材の内部発掘と革新的データ処理基盤の活用とは?

【後編】ゲスト:西日本旅客鉄道株式社 デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 CCoE・モダナイズ 柴田修作氏

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WESTER経済圏の確立に欠かせない「リアルタイムリコメンド基盤」

──外部から人材や知見を取り入れ、既存の素養のある人材とかけ合わせることでデジタル変革を進めているわけですね。では、具体的な協働の事例にはどのようなものがあるのでしょう。

柴田:例えば、J-WITS社はギックス様と共同で「リアルタイムリコメンド基盤」を開発しています。この開発を通じて、J-WITS社は開発体制を内製化し、マーケティング基盤の構築やパブリッククラウドでの開発のノウハウを獲得しました。

──「リアルタイムリコメンド基盤」ですか?

花谷:リアルタイムリコメンド基盤とは、WESTERアプリやICOCAなどの複数のタッチポイントから得られるデータを分析し、顧客に最適なオファーを配信するためのデータ処理基盤です。WESTER体験を確立するには、顧客一人ひとりへの最適なオファーやそれに伴うインセンティブ付与の仕組みが必要不可欠です。その土台を支えているのがリアルタイムリコメンド基盤ですね。

 リアルタイムリコメンド基盤を活用すれば、顧客の行動情報をリアルタイムで把握し、個別のニーズに即した最適なタイミングでのオファーが可能になります。例えば、WESTER会員の顧客がチケット予約サービス「e5489(イーゴヨヤク)」で新大阪駅のチケットを購入すると、そのデータを収集したリアルタイムリコメンド基盤が、顧客が新大阪駅に到着するタイミングでWESTERアプリを介して駅構内店舗のオファーを配信します。

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資料提供:西日本旅客鉄道株式社/クリックすると拡大します

柴田:リアルタイムリコメンド基盤を導入して大きく変わったのは、マーケティングにおけるPDCAのスピード感です。実は、以前から事業やサービスごとにデータは収集していましたし、CRMを活用して顧客に個別のメールを配信するなどはしていました。

 しかし、CRMは定型的なマーケティング施策や分析しかできず、施策の効果検証や新たな施策の構築に要する期間が長期に亘っていました。以前の開発手法では施策企画から1~2年開発期間が必要なこともしばしばありました。しかし、リアルタイムリコメンド基盤を構築してからは、半年ほどでPDCAを回すことが可能になり、施策展開におけるスピード感が劇的に加速しています。

──収集したデータをなかなか活用できていないのも課題だったわけですね。同じ課題を抱える企業は多そうです。

柴田:JR西日本のように事業領域が多岐に亘っており、さらにオンラインとオフラインの両方のタッチポイントを有していると、お客様のデータを統合して運用するのが非常に難しいです。実際に、既存のCRMでは分析の粒度に限界があり、お客様にも画一的なオファーを出さざるを得ない状況がありました。その意味でも、リアルタイムリコメンド基盤は必要不可欠なツールだったと思います。

──リアルタイムリコメンド基盤は、デジタルとマーケティングが一体となって構築されている印象です。

柴田:まさにそうです。実は、以前から、鉄道利用に紐づくカスタマージャーニーはかなり詳細に把握していたのですが、それに対してアプローチする手段がないという課題がありました。お客様が鉄道を利用したあとに、食事をしたり、買い物をしたりといった行動を起こしているにも関わらず、そのニーズに即したマーケティングを展開できるデジタル基盤がなかったわけです。そうした課題が出発点となって、リアルタイムリコメンド基盤が構想されました。

花谷:現在、WESTERアプリは約300万ダウンロード、WESTER会員数は約900万人にのぼっています。西日本エリアに限っていえばかなりの知名度を獲得していますし、今後の広がりも十分期待できます。リアルタイムリコメンド基盤は、これからますます重要な役割を果たしていくと思います。

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株式会社ギックス 代表取締役COO/Data-Informed事業本部長 花谷慎太郎氏

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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