生成AI時代におけるデザインの「主体」は誰か
自身が経験した生成AIの活用ケースとして、本村氏はデジタルツールのUI制作の事例を紹介する。同氏が所属するゆめみで導入しているFigmaのPluginである「Wireframe Designer」には、テキストの指示に従って生成AIがワイヤーフレームをアウトプットする機能が備わっている。その機能を利用して、本村氏が「非常に限られた情報で、人々がビジネスアイデアを考えるのを助けてくれるツールのUIを描いて」と指示したところ、一定以上の精度を持ったUIが瞬時にアウトプットされた。
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本村氏が述べる通り、デザインのプロセスにおけるラフなアイデアの段階には、数多くの問いが存在する。これらの問いのすべてに仮説を立て、モックのような形で具体化し検証するには、膨大な工数を費やさなければいけない。そのすべてを専門的な職能を有したデザイナーが担うのは極めて非効率だ。
しかし、上記のケースのように生成AIを活用すれば、従来はデザイナーが担っていた役割を非デザイナー人材が担うことが可能になり、デザインのプロセスを大幅に短縮できる。
「生成AIでアウトプットしたアイデアをユーザーにテストしたりアンケートを取ったりすれば、リサーチにも活用できるでしょう。これが実現すれば、仮説検証のサイクルはより加速するはずです。何より、非デザイナー人材が自らのアイデアを主体的に具現化できるというのが大きい。これはつまり、『ラフさが許容される文脈では、デザイナー以外もデザインの主体になれる』ということです。生成AI時代とは、非デザイナー人材の職能がエンハンスされることで、万人がデザインの主体になれる時代のことでもあります」(本村氏)
ヒトによる「行為のデザイン」の重要性が増す
生成AIがデザインのあり方を一変させる時代、私たちはデザインにどのように向き合うべきなのだろうか。本村氏は、ノーベル経済学賞の受賞者で、政治学者・経営学者・情報科学者であるハーバート・サイモンによるデザインの定義を引いて、以下のように述べた。
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「ハーバート・サイモンは、行為としてのデザインを『現在の状態をより好ましいものに変えるべく行為の道筋を考案するものは、誰でもデザイン活動をしている』と説明しました。つまり、もともとデザインは専門的職能を有するデザイナーに限定された行為ではなく、あらゆる人やチームや組織が自然に行っているものです。生成AI時代においては、このデザインの側面がクローズアップされると私は考えています」(本村氏)
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