あらゆる企業変革は、まず若手層を刺激せよ
──「ミドルからやや年次が若い方々」を対象にした狙いは何でしょうか。
山地:当社の次世代を担う層ということもありますが、ちょうどこのあたりが「お客様とのギャップを感じやすい世代」なのではという見立てがありました。
現在、部長や課長を担っている層は、従来型の不動産営業の世界で成果を挙げてきたので、その時代の常識に捉われやすいところがあります。しかし、それよりも世代が下ると、今まさに現場の最前線で仕事をしていることもあり、世の中の常識や価値観の変化を肌身で感じる機会が多いです。そのなかでは、住宅を販売する私たちとお客様とのギャップを感じることも多々あるでしょう。その感覚をカスタマージャーニーの作成やアイデアの構想に活かしてほしいと思いました。
──なるほど。
山地:この世代は、友人知人などの同世代の人たちと、旧来的な文化の残る不動産業界との間に大きな差を感じていると思います。その感覚を解放してもらって新たな発想を生みたいというのが、本プログラムの狙いでした。
それに今回のCXプログラムに限らず、あらゆる教育プログラムは中核層から実施したほうがいいというのが私の持論です。教育プログラムは実践に繋がらなければ意味がありません。経営層をはじめ上層部は、自らの成功体験が足枷になって、行動や習慣を変えるのに大きなエネルギーを求められます。その点、中核層は心身ともに柔軟ですし、教育プログラムで学んだ内容を実践に活かしやすいです。DX推進は変革活動ですから、いかに参加者の行動を変化させられるかがカギになると思います。
──CXプログラム実施後の展開を教えてください。
山地:係長職を中心にプログラムを実施し、参加者たちから好意的な評価が集まったことから、実施対象を拡大して部長職にもプログラムを展開しました。部長職向けには、KPIの管理や従業員満足度などマネジメント層向けの話題を交えながら、顧客体験について理解を促す内容を提供しています。
──部長層からの反応はいかがだったでしょうか。
山地:予想以上に好評でした。例えば、部長層は事業間やグループ間のシナジーをいかに生み出すかを日々構想しているわけですが、その際に顧客体験という思考の軸が非常に役立つという声を聞きました。顧客体験の視点を持つことが、部長職のクラスの業務にも有用であると確認できたのは、大きな収穫でした。
藤原:MIRARTHホールディングスのバリューの一つに「情熱・感動」がありますよね。私は外部のパートナーとしてプログラムの様子を観察していて、部長職のクラスの方もお客様に情熱や感動を与えたいという思いを強く持っていることが印象的でした。お客様への強い思いがなければ、顧客体験の構築やカスタマージャーニーの理解には真剣になれませんから。