LIXILのUX組織は“1人横串組織”から始まった
藤井保文氏(以下、敬称略):本日は、LIXILのUX組織であるUX Strategy & Design部の部長を務めるマイク高橋さんをお招きしました。ビービットは以前からLIXILのUXグロースに携わっていて、マイクさんとは旧知の仲です。ビービットが標榜する顧客体験戦略や「DXのゾンビ化」といったコンセプトにも理解が深い方なので、真に迫った議論をできるのではないかと楽しみにしています。まずは、読者に向けて経歴をお聞かせください。
高橋マイク氏(以下、敬称略):私のキャリアのスタートは広告代理店のWebデザイナーです。その後、クリエイティブディレクターとしてクライアントワークに従事するなかで事業会社での仕事に興味を持って、インハウスのマーケターに転身しました。そして、複数の外資系の事業会社でデジタルマーケティングやUXデザイン、サービスデザインなどに携わった後に、LIXILに入社しています。
LIXILへの入社後は、プロユーザー向けの動画配信サービス「LIXIL-X」やデジタル商品検索サービス「プロダクトサーチ」を立ち上げ、2024年4月にはUX Strategy & Design部の発足に伴い同部署の部長に就任しました。
藤井:マイクさんは外資系での経験が長いですよね。日系の大企業であるLIXILに転職した理由は何だったんですか。
高橋:前職時代の上司がLIXILの米国法人に転職していたのが最初の接点です。その後、私はLIXILに入社して一度会社を離れているんですが、そのあとに再入社したのはLIXIL-Xの立ち上げがきっかけでした。ほぼ同時期にLIXILの欧州拠点でも同様のプロジェクトが進んでいたこともあって、海外拠点と連携しながらサービス開発ができる人材を会社側が求めていたようです。
ただ、私は当時から藤井さんが共著者の『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(日経BP)の熱心な読者だったので、特定のサービスを作って、リリースして、改善して……という仕事にあまり意義を感じられなかったんですよ。顧客体験起点でサービスを繋げ合わせたり、事業全体をデザインしたりといった仕事がしたいなと。なので、入社の際には「LIXIL-Xの専門家になるつもりはありません」と明言して、複数のサービスやプロダクトに携われるポジションを条件に再入社しました。
結果として、私の意向を会社側が理解してくれて、LIXIL-Xのプロジェクトマネージャーを務める傍ら、社内のサービス開発や課題解決に関わる「1人横串組織」のような動きをするようになりました。ただ、いろんなプロジェクトに社内コンサル的に参画するだけでは、私の立場が不明確ですし、プロジェクトメンバーも誰に報告を上げていいのか混乱してします。なので、正式な組織を立ち上げようと決まり、UX Strategy & Design部の発足につながりました。