製品やサービスの本質を掘り下げることで起こすイノベーション
大角:今後のさらなる成長に向けて、どのような取り組みを検討していますか。
増田:まずは、企業ブランドの確立です。当社は、「ビオスリー」のコアを深く掘り下げ、その機能を見極めることで事業を拡大してきました。その証拠に、健康食品事業にも事業開発にも、「ビオスリー」で蓄積した腸内環境とプロバイオティクスに関する知見が生かされています。
このようなスタンスの延長線上ともいえるでしょうが、当社は健康の「土台」を支える企業として立場を確立していきたいと考えています。たとえば、「ビオスリー」だけで完全な健康を実現できるわけではなくても、「ビオスリー」によって土台の腸内環境を整えた上で別の医薬品をアドオンすれば、より効率的に健康を維持・増進できる可能性がある。そういった「土台」となる商品作りを進めていきたいのです。プロバイオティクスは研究途上であり、今後も市場変化が予想されますが、常に貢献領域を見極めつつ、企業ブランディングを行っていくつもりです。
次世代のマネジメント層育成も、注力事項の1つです。当社は元々、同族経営が続いてきたこともあり、社長の権限が大きかったのですが、今後は営業所長をはじめとするマネジメント層の裁量を拡大し、彼らが自主的に市場を開拓していけるような体制を作りたいと考えています。
大角:後進育成のプロセスでは、パーパスの浸透がますます重要になってきそうですね。
最後に、創業60年以上の会社を成長させ続けている増田さんにとって、ヘルスケアイノベーションを起こすポイントは何だとお考えでしょうか。
増田:イノベーションというと、製品やサービスにまったく別の要素をかけ合わせてスパークさせるようなイメージを抱きがちですが、むしろ製品やサービスの本質、それが持つ機能を深掘りし、アプローチを多角化するのも、イノベーションを起こす1つの方法だと考えています。
「ビオスリー」も、単なる整腸剤として捉えるのではなく、「腸内環境の改善によって何ができるか」というところまで考えたからこそ、対象の診療科領域を広げたり、事業内容を拡大したりといった施策につながりました。新しい製品を開発するのではなく、既に持っているものを新しい市場に持ち込む。その際のインパクトの出し方に、イノベーションのポイントがあるのではないでしょうか。
大角:新しいことに数多く取り組みながらも、「1つのことを深掘りする」という姿勢が一貫していることを実感しました。今後のイノベーションにも期待しています。ありがとうございました。