業界を代表する3社はなぜ投資活動に踏み切ったのか
近年、急速に増え続けていることが明らかになったCVCだが、そもそも各社はどのようなきっかけでCVCを立ち上げ、どのような領域に投資しているのか。
この立山氏の質問に対し、最初に答えたのは、CVCの立ち上げ期にある第一三共ヘルスケアの時久氏だ。時久氏によれば、広く一般向けのヘルスケア領域を中心に、「第一三共ヘルスケアの事業開発に資する」企業との協業を目標とし、それに伴い直接投資も検討しているという。
一方、2018年にCVCを立ち上げ、現在投資サイクルを一周しつつあるのがポーラ・オルビスホールディングスだ。同社の前澤氏によると、「社内新規事業制度を活用して、社員自らCVC設立を提案したのがきっかけだった」とのこと。その背景には、企業の成長戦略において自社のみで成長を追求するだけでなく、外部のスタートアップと連携を深め成長する可能性があるのではないかという考えがあった。
当初は、D2Cという領域に注力して投資したこともあり、将来的な買収を含め自社ブランドとのシナジーが見出しやすかった。その後、投資ポートフォリオを徐々に拡大していくうちに、現在は自社ドメインから離れた領域への投資も数多く行っている。現在はウェルビーイングをテーマに女性向けtoCビジネスからコマース領域等の領域を中心とし、財務リターンが見込めてかつ中長期的な協業可能性が高い企業にBS投資を行っているという。
![株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 総合企画室 CVC・LPチーム ベンチャーキャピタリスト 前澤早紀氏(写真中央)](http://bz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/11144/11144-2.jpg)
京都銀行を擁する京都フィナンシャルグループの投資子会社である京都キャピタルパートナーズも2016年に投資活動を開始しており、投資サイクルを一巡しつつある1社だ。同社の村田氏によると、元々京都銀行は、ニデックや京セラ、任天堂、オムロンといった京都を代表する大企業の創業初期から株主として名を連ねてきた上に、2000年代からは二人組合型のLP投資も行っていた。しかし、2013年に産業競争力強化法が成立し、その後国立大学で相次いでVCが設立されると、大学の多い関西でもスタートアップの活動が活発化。その動きに対応するかのように、京都銀行でも独自の投資活動が始まったという。
村田氏曰く、投資対象の領域は「地域」だ。業種やステージを問わず、特に関西を拠点に活動する企業をメインに投資しており、結果的に投資先の約6、7割を大学発ディープテック領域のスタートアップが占めている。
![株式会社ゼロワンブースターキャピタル パートナー 立山冬樹氏(写真右)](http://bz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/11144/11144-4.jpg)