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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

ENEOSの社内ベンチャープログラムはなぜ「運営担当者」や「管掌部署」が変わっても進化し続けるのか

ゲスト:ENEOS 大間知孝博氏、堀尾聡裕氏(後編)

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応募数・質の安定化と「No Limit!」との連携

イノベーション:制度を続ける上でもう1つの大きな課題が「応募数と質の維持」です。私の経験では、初年度は蓄積されたアイデアが一気に出てくるものの、2年目以降は徐々に減少するケースが多いです。2019年に開始したChallenge Xにおける、応募状況の推移はいかがでしょうか。

堀尾:初年度は、それまで社員の中にあったアイデアが噴出した側面があり、200件を超える応募、約150人の参加がありました。以降は、おおよそその半分程度で推移しています。ただ最近は減少傾向だったものが持ち直してきており、これには後ほどご紹介する「No Limit!」との連携も寄与していると考えています。

大間知:応募テーマとしては、エネルギー、モビリティ、サステナビリティ関連が半数以上を占めており、この傾向は変わりません。ただ、質的には向上していると感じています。特に再応募される方のレベルが上がっており、“こなれた”案件が増えてきたように思います。また、初めて応募する社員を増やすためにも、関係各所の協力による社内宣伝活動を通じて、制度の認知と理解を高める努力を続けています。

イノベーション:「再応募者の質向上」というのは納得ですね。これは制度が単なるイベントではなく、真の学びの場として根づいている証拠ではないでしょうか。一方、応募数の維持は多くの企業が直面する共通課題だと思います。私がこれまで各社の新規事業担当者と意見交換する中でも、「100件超の応募をなんとか確保したい」という声をよく耳にします。何か特別な秘策があれば教えてほしいという要望も多いのですが、やはり地道な社内啓発と制度の継続的な改善が王道なのだと実感しています。ところで、ENEOSはグローバル企業ですが、海外拠点からの応募はどのような状況ですか?

堀尾:海外からの応募は、門戸は開いていますが、まだ実績はありません。2024年度からは募集の告知を英語でも併記するようにし、実際に国内の英語話者から応募がありました。グローバル企業として、より多様な視点からの提案を受け入れる姿勢を示していきたいと考えています。英語での応募は今年初めての試みでしたが、実際に応募があって選考が進んでいったことは大きな一歩だと考えています。

ENEOSホールディングス株式会社 未来事業推進部 事業推進4グループ マネージャー 堀尾聡裕氏
ENEOSホールディングス株式会社 未来事業推進部 事業推進4グループ マネージャー 堀尾聡裕氏

イノベーション:1件でもこうした応募があることで、次年度も継続する動機づけになりますね。応募数の持ち直しに貢献している「No Limit!」というプログラムについても教えていただけますか?

大間知:「No Limit!」は、人事部、中央技術研究所、そして未来事業推進部の3部門が連携して運営している研修的な色彩の強い新規事業創出支援プロジェクトです。参加者の事業アイデアの具体化をサポートしており、事業化の芽がありそうな案件は、Challenge Xに接続する仕組みになっています。

堀尾:それぞれの部署がバラバラに新規事業創出のプログラムを運営していた状況から、「ENEOSグループには変革に挑戦する社員や、それを後押しする風土が今まで以上に必要になる」という共通認識のもと、プログラムを再編・集約しました。実際、約10名が「No Limit!」を経てChallenge Xに応募しており、新規事業に関心を持つ人材の裾野拡大につながっています。

大間知:ただし、今後もこの枠組みが最適かどうかは継続的に議論しています。当初の計画に対して実績や課題を洗い出し、常にブラッシュアップしていく姿勢を大切にしています。私たちChallenge X事務局としては、「新規事業をやりたいけれどどうしていいかわからない」という社員たちが事前にトレーニングを受け、挑戦してくる人数を増やしたいという思いがあります。今後も何らかの形でこうした取り組みを続けていく必要があると考えています。

イノベーション:人事部、研究所、事業開発部門という3つの異なる部署が連携したプログラムというのは非常に画期的ですね。私が各社の新規事業提案制度をヒアリングした経験では、これらの部門が別々に類似のプログラムを運営し、結果的にリソースが分散したり社員が混乱したりするケースをよく見てきました。「R&D部門は技術起点」「事業開発部門は市場起点」「人事部は人材育成起点」と、それぞれの視点が異なるために連携が難しいことが多いからです。

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事業特性に応じた出口戦略の重要性

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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