EYは、最新のM&Aに関する調査レポート「EYパルテノン CEO Outlook 調査」を発表した。
同調査は、世界のCEO1,200人(日本70人)を対象に、2024年の米大統領選直後に実施している。
企業の意思決定は、テクノロジーの急速な進歩、サステナビリティ課題の多様化、地政学的緊張といった要因により、複雑さが増しているという。2025年にはこれらの要因がさらに強まるとCEOの49%が予想。しかし、全体的な信頼感は高まりを見せており、自信のあるCEOは本調査で73.5%に上り、2024年9月時点の70.5% から着実に増加している。こうした企業では、変革を最重要課題に位置付けているという。また、半数を超える(57%)CEOが、変革を通じた将来のビジネスモデルの再考に、「非常に自信がある」と回答。同調査では、こうした自信の度合いが、将来、先進企業となるか、それともラガード企業となるかを決定づけると指摘しているとのことだ。
また、CEOが戦略的ビジョンと人的投資(特に、技術革新のスピードに合わせた従業員の保有スキル向上“アップスキリング”)を企業の成長要因として重要視していることが示された。世界のCEOの85%が、2025年には従業員のスキルギャップの解消および人材と新技術の最適なバランス調整が重要な成功要因になると考えているという。他方、人材に関しては、依然、慎重な見方が根強く、CEOの42%が、収益性が低下すれば労働力の削減もあり得ると回答した。
加えて、最も自信のあるCEOは、変革を通じて従業員と顧客のエクスペリエンス向上を目指す可能性が高い(60%、最も自信のないCEOは30%)のに対し、自信の度合いが低いCEOは、売上増加と収益率拡大にフォーカスした変革を進めている(40%、最も自信のあるCEOは20%)という現状も明らかになったとしている。
2025年はM&A活動が一層活発に
2025年のM&A活動への意欲は全体的に高まりを見せており、M&Aを積極的に行う予定と回答した世界のCEOは、2024年9月時点の37%から56%へと大幅に増加。これは、同調査シリーズの直近約2年間で最も高い割合だとしている。こうした調査結果は、2024年で見られたM&Aの回復基調が今後も続き、2025年にはその勢いがさらに増すことを示唆しているという。特に、最も自信のあるCEO(70%)は、2025年にM&A活動をこれまで以上に重点的に追及する予定でいるとのことだ。一方、自信の度合いが低いCEOのうち同様の意欲を示したのは、わずか17%。概して、CEOの96%が、2025年に何らかのディ―ル(M&A、事業売却/スピンオフ/新規株式公開(IPO)、合弁事業または第三者との戦略的アライアンス)を行う予定でいるという。
また、2025年には、メガディ―ルと呼ばれる巨額案件が増加する兆しがあり、世界のCEOの60%が100億米ドルを超えるM&Aの増加を予想。資産の売却を検討しているCEOも半数近くおり、48%が売却またはカーブアウト(分社化)を予定しているという(2024年9月時点では44%)。こうした状況は、2025年のM&A市場がさらに活発化する好材料になるとしている。
2025年の世界の主要な資本投資先上位5ヵ国に、米国、カナダ、メキシコが入っている。これらの国で活発な投資が行われれば、グローバル企業は米国の関税政策による潜在的なコスト増加を回避できる可能性があるという。なお、ドイツと英国も上位5ヵ国に入っている。また、M&Aで注目されている業種上位3は、不動産、テクノロジー、消費財だとしている。
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