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企業の持続的成長を実現する「顧客資本経営」

顧客資本経営はAIで進化する──2030年に勝ち残る企業になるための“3つのステップ”

第2回

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2030年CSの未来からの逆算 AIX時代の顧客接点変革とは

 iPhoneの登場により、生活者のメインスクリーンはPCからスマートフォン、そしてブラウザからスマホアプリへ移行し、SNSやメッセージアプリの普及によって「顧客接点」が一気に拡大しました。

 その後、広告単価の高騰、UXリニューアルの後手、非モバイル対応による顧客流出などが起き、経営層の方々は、投資タイミングの重要性を痛烈に体感したはずです。

 AIX時代の顧客接点変革は、あの出来事以上に高速で広範囲に及びます。ここで、AIXが進んだ2030年の顧客接点を想像してみましょう。

 2030年には顧客側に誕生したパーソナルAI(未発表だが間もなく実用化される想定)と企業側AIオペレーターが直接対話するAgent2Agent(A2A)が顧客接点の標準になると予想しています。

 問い合わせ窓口は完全にAIが担い、そして最終応対の70%をAIが完結するようになります。音声はリアルタイムで文字と感情に変換され、FAQページやIVR(Interactive Voice Response)は姿を消します。顧客が「機器が壊れた」「住所を変更したい」と一声かけるだけで、最適な手順やフォームが即座に提示されます。顧客の労力を要さないエフォートレスなサービスの究極版、Zero-Click Supportが当たり前の時代になるでしょう。

 AI同士の対話ログ(顧客パーソナルAIと企業AIエージェントのセッション全体)がVoCとして蓄積され、プロダクト改良・価格調整・リスク判定は日次で自動更新されます。カスタマーサポート(CS)は「コストセンター」から「成長エンジン」へと完全に立ち位置が変化します。

 組織面でも変化は決定的です。Chief Customer Officer(CCO)が任命され、CS出身の経営幹部が増えます。人間オペレーターは高付加価値の相談や戦略的なアップセルに専念し、AIエージェントの品質を磨き込む専門家チームが社内に編成されるようになっていくでしょう。顧客ロイヤルティや定着率を示す顧客維持率が、IR資料の主要KPIとして浮上し、CS投資と顧客維持率を開示しない企業は市場で評価を下げる時代が到来するだろうと予想しています。

AIXの成否がわかれるのは今年

 この未来から逆算すると、まさに今年が成否の分岐点となります。

 下記3点を今年中に着手しなければ、断片的な学習データではAIモデルが精度不足に陥り、2030年の自動化標準ラインから脱落してしまいます。

  1. VoC統合基盤の構築:電話・チャット・SNSを横串にし、顧客AIと企業AIがリアルタイムに同じデータの流れを参照できるハブを整備
  2. AIエージェントの初期学習量の確保:顧客セグメントの対話ログを集中的に収集し、パーソナルAIとの対話品質を高める
  3. Supportプロトタイプの検証:パーソナルAI想定での完全自動応答を一部顧客で実証し、運用ノウハウと成功モデルを磨き込む

 デジタル接点拡大で、先行者利益を得た企業や出遅れて痛い目を見た企業ほど、既にパーソナルAI×企業AIエージェントの未来に向けた第一歩を踏み出しています。

次のページ
VoCフライホイール 顧客体験を高速で進化させる仕組みづくり

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この記事の著者

野村 修平(ノムラ シュウヘイ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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