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私の新規事業史

DeNAでの成功体験から大企業との共創まで。Relic北嶋氏が語る、新規事業キャリアと次の展開

ゲスト:北嶋貴朗氏

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ブームから経営アジェンダへ。日本企業の新事業環境の変化

──Relic創業からの10年間で、日本企業の新規事業環境はどのように変化しましたか。

北嶋:コロナ禍を境に、劇的に変わりました。2015年から2019年頃は、オープンイノベーションやリーンスタートアップといった手法が注目され始めた時期でしたが、経営層にはまだ「とりあえず流行やトレンドを押さえておこう」という雰囲気があったように思います。手法論が先行していた時代でした。

 ところがコロナ禍によって、経営層も「本気で企業変革やDXに取り組まなければ会社が危ない」という強い危機感を抱くようになりました。新規事業やDXが、単なる選択肢ではなく「企業変革」という経営アジェンダの中心に据えられたのです。これは非常にポジティブな変化だと捉えています。

──この10年では、新規事業への取り組みが全国に広がったことも特徴的です。Relicも16都道府県に拠点を展開されていますが、その背景を教えてください。

北嶋:おっしゃる通りです。私たちの最初の地方展開は、和歌山県からの熱烈なアプローチがきっかけでした。和歌山には優秀なIT人材が育つ土壌はありましたが、地元に魅力的なIT企業が少なく、若者の多くが大阪や東京に流出してしまっていたのです。「優秀なエンジニアの卵がいても、地元に残るとスキルを活かせる就職先がない」という切実なご相談でした。

 実際に現地を訪れると、「和歌山が好きで残りたいが、挑戦できるおもしろい会社がない」という学生たちのリアルな声を聞きました。そこで和歌山に開発拠点を設立したところ、現在では多くのメンバーが在籍する、社内でも重要な拠点の一つに成長しています。人口減少に直面する地方の危機感は非常に強く、私たちは和歌山での成功モデルを基に、ここ数年で一気に拠点を増やし、現在は16都道府県に展開するに至りました。将来的には47都道府県すべてにRelicの拠点があり、メンバーが常駐して地域に根ざした活動をしている状態を創っていきます。

挑戦者は増えたが、事業が「大玉化」しない。新規事業の次の課題

──新規事業に携わる人材の質や層にも変化はありましたか。

北嶋:企業の制度整備が進んだことで、挑戦者の裾野は大幅に広がりました。かつては一部の突き抜けた個人が牽引していましたが、今は制度に基づいて手を挙げる人が増えています。その一方で、ゼロからイチを生み出す経験者は増えたものの、事業がなかなか「大玉化」しないという新たな課題も見えています。

 また、アプローチも変化しました。当初は「顧客の声を聞きながら改善する」というマーケットドリブンの手法が主流でしたが、それだけでは自社のアセットや強みを活かせず、結果的にスタートアップにスピードで劣る“小粒な”事業になりがちです。現在では一周回って、マーケットドリブンの視点は持ちつつも、自社の強みやアセットを活かすアセットドリブンや大きなビジョンや構想から逆算していくビジョン・ミッションドリブンの視点もなければ事業は大きくならないという認識が広がっています。求められるケイパビリティは、個人の情熱だけでなく、より高度で複合的になっていますし、より経営トップのコミットメントやトップダウンでの強い関与なども重要になってきます。

──支援する側の人材については、いかがでしょうか。

北嶋:冒頭で申し上げた通り、いわゆる支援事業者側のレベルをさらに引き上げる必要があります。新規事業を一度経験しただけで支援者になる方も増えていますが、重要なのは、支援する側に回った後も学び、挑戦し続ける姿勢や自ら真の事業リスクを取って共創する覚悟です。自ら事業を立ち上げた経験のない人が、座学として新規事業を教えることには限界があります。私たちRelicも含め、支援者改め「共創者」は常に事業の最前線から離れず、自らもリスクを取り、生々しい経験を積み重ねることこそが、本質的な価値提供につながると考えています。

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「各社の勝ち筋」が問われる、新規事業の多様化時代へ

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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