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中計から紐解く「決算分析」入門

企業分析と事業計画をビジネスパーソンが学ぶ意味──初心者が苦手意識を克服し、共に闘うための地図とは

ゲスト:株式会社プロフィナンス 木村義弘氏/株式会社ファインディールズ 村上茂久氏

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なぜ事業計画は「予測」ではなく「意思」が重要なのか

栗原:木村さんの著書では、「事業計画の本質は、精緻な予測ではなく、検証できることだ」と述べられています。なぜ「予測」ではなく、検証が可能な「仮説構造」に焦点を当てることが重要なのでしょうか。

木村:私は「予測」という言葉を意図的に使わないようにしています。予測とは“What will happen”(何が起こるか)を考えることであり、それは村上さんのおっしゃるリーディング、つまり「理解」の世界です。しかし、事業計画のテーマは“What should we make happen”(我々が何を起させるべきか)であり、そこには明確な「意思」が込められていなければなりません。

 そして、事業は一人ではなくチームで行うものです。メンバー全員が同じ方向を向くためには、「私たちの事業はこういう構造になっている。だから、このレバーを押せば、こういう結果が出るはずだ」という共通の地図(構造認識)を持つことが不可欠です。その構造に「こうありたい」という意思を込めていく。そのために、未来を当てる「予測」ではなく、チームで実行し、結果を検証できる「仮説構造」を重視しているのです。

木村義弘
株式会社プロフィナンス 代表取締役CEO 木村義弘氏(『事業計画の極意 仮説と検証で描く成長ストーリー』著者)

栗原:その「仮説構造」を考え、チームとして「再現性」のある計画を立てるためには、どのような思考プロセスが必要になりますか。

木村:構造化する最大のメリットは、実行可能なアクションプランにまで落とし込めることです。具体的なアクションがあれば、「これをやったら、こうなった」「これは仮説通りにいかなかった」という学びがデータとして蓄積されていきます。

 「再現性」とは元々、科学の言葉で「同じ条件下で同じ実験を行えば同じ結果が得られる」ことを指します。ビジネスも単なる博打ではありませんから、その成功確率、つまり再現性を高めていく必要があります。そのために、実験方法である「構造」をまず定義し、その構造に基づいてアクション(実験)を繰り返す。この思考プロセスが、個人の勘や経験だけに頼らない、チームとしての再現性を生み出すのです。

村上:木村さんのお話は、組織論としても非常に重要です。特にスタートアップでは、初期はスーパーマンのような経営者が一人で事業を牽引できても、組織が大きくなるにつれて他のメンバーも同じレベルで計画を立て、実行できなければ成長は止まってしまいます。この本は、試行錯誤の末にたどり着くその境地へのショートカットを示してくれています。計画は仮説が土台ですから、高速で検証し、計画と実績がズレたときにどこが原因かを特定し、立て直す。そのサイクルをどう回すかという、これまで言語化されてこなかったノウハウが、明確に書かれていると感じます。

村上茂久
株式会社ファインディールズ 代表取締役 村上茂久氏(『決算分析の地図 財務3表だけではつかめないビジネスモデルを視る技術』著者)

企業の優位性は「B/S(貸借対照表)」に表れる

栗原:良い計画には、競争力の源泉となるビジネスモデルや成長戦略が不可欠です。そうした戦略的な要素を、未来の「B/S(貸借対照表)」にどのように反映させて計画すべきでしょうか。

木村:B/Sは、企業の「お金の集め方(負債・純資産)」と「使い方(資産)」を一覧にしたものです。特に「使い方」である資産の部にこそ、その企業の競争優位性が表れます。

 私はよく、P/L(損益計算書)は陸上競技の「タイム」、B/Sは「体組成」だと、言っています。100m走のタイムは風向きなど外的要因で変わりますが、9秒台で走るための筋肉質な体組成は、日々のトレーニングである程度までは、自らの意思である程度までは作ることができますよね。そして、求められる体組成は競技によって異なります。短距離走選手と相撲の力士では理想の体が違うように、ビジネスモデルによって理想のB/Sの形は全く違うのです。

 その「理想の体を作る」という部分に、自社の競争優位性をどう作り込むかという意思を込めること。それが、事業計画におけるB/Sの役割だと考えています。

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サンリオとオリエンタルランド、タイミーの事例に学ぶ「ビジネスモデル」の見極め方

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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