AI時代に重要な「自動化スキル」と「学際的スキル」
Biz/Zine編集部・栗原茂(以下、栗原):生成AIの進化で、スキルの賞味期限はますます短くなっています。このような時代に、私たち個人は何を学ぶべきでしょうか。単純作業はAIに任せ、より高次の判断や創造性が求められる「メタスキル」の重要性が増しているように感じます。
後藤宗明氏(以下、後藤):これまでの仕事のやり方や雇用の概念が根底から覆ると考えています。特にホワイトカラーの仕事において、正確なタスク実行や単純なオペレーションはAIやロボットが担うようになるでしょう。最新刊の『リスキリング【人材戦略編】』(日本能率協会マネジメントセンター)でも述べましたが、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが言うように、「AIがあなたの仕事を奪うのではない。AIを使う人があなたの仕事を奪うのです」という現実がすでに始まっています。
そのなかで、人間に残される重要な仕事は「未解決の課題を特定し解決していくこと」に集約されていくはずです。AIは正解を出すことは得意でも、課題を設定・特定する力や、自らを客観視するメタ認知能力はまだ持っていません。
そこで重要になるのが、2つの新しいスキルの考え方です。1つは「自動化スキル」。これは、AIに仕事を奪われると抵抗するのではなく、むしろ積極的に自分の業務を自動化し、生産性を極限まで高めていくなかで身につくスキルです。もう、この「自動化」の流れに逆らうことはできません。勇気を持って自分の仕事をAIに「手放す」ことで、初めて人間が担うべき、より価値の高い仕事が見えてくるはずです。
もう1つが「学際的スキル(Interdisciplinary Skills)」です。これは、複数の異なる専門分野の知識を統合し、応用することで、新たな価値を創造するスキルのことです。私自身のキャリアを振り返ると、まさにこの学際的スキルに助けられてきました。

20代から30代にかけて培った「人材育成分野」のスキル、40代前半で身につけたNPOでの「社会課題解決分野」のスキル、そして40代後半から必死で学んだ「デジタル分野」のスキル。この3つの異なる領域の経験があったからこそ、「技術的失業という社会課題を、リスキリングという人材開発の手法で解決する」という、私自身の天職にたどり着くことができました。スティーブ・ジョブズの言う「Connecting the dots(点と点をつなげる)」そのものです。これからの時代は、今持っている専門性に何を掛け合わせれば新たな価値を生み出せるか、という視点が極めて重要になります。