製販一体型の中国のイノベーション
シンガポールやイスラエルのように、国策としてイノベーションを推進していく国もある。やはりそこでも見逃せないのが、都市とイノベーションの関係だ。「人材」「競争」「市場」をキーワードにそれを生み出すシリコンバレー。世界の他の都市では、何をイノベーションのエンジンとしているのだろうか。
近年、経済成長の著しい中国には、小米(シャオミ)という企業がある。創業してから4年の間に1000以上の製品をリリースし、タブレットやネット対応テレビなどの製品も展開している、2014年度には世界3位に躍り出たスマホメーカーだ。小米の特徴は、なんといっても自前でR&Dを持たないという点だが、それを成り立たせているのは深センという都市だ。
サムソンもアップルも製品をみんな深センで作っています。すると、製造技術のある種の「ダダ漏れ」が起きて、深センというコミュニティの中で蓄積・共有されていきます。だから、最初に「ユーザーはこういう仕様を求めている」というマーケットニーズさえ掴めば、コミュニティに蓄積・共有されている技術を使って、製品を作ることを可能にします。
優秀な人材を競争によって選り分けるシリコンバレーとはイノベーションの生み出され方が大きく異なる。それは都市の違いでもある。
中国は電気・電子製品の深セン、家具・軽工業品の義鳥(イーウー)、EVの天津(テンシン)という風に、都市ごとに分野が異なるが、生産者・消費者・販売者が一堂に会する製販一体の巨大マーケットを持つ。それは世界にも類を見ない中国の特徴だ。
都市にいる人や物の流れや結びつき方でイノベーションの様相は大きく変わってくる。北欧のデンマークもまた、これらの都市とは異なる仕方でイノベーションを生み出す、独自のイノベーションエンジンを持っている。