「顧客の生の声」と独自AIが信頼性の高い分析を実現
──昨今、音声解析のサービスが数多くリリースされていますが、それらと「Front Agent」の違いはどのような点にあるのでしょうか。
新納(Umee Technologies):営業活動の分析という観点でいえば、「顧客の生の声」をもとに分析やインサイトを抽出できるのが強みです。
たとえば、生成AIツールに営業活動の音声を学習させて、提案内容を分析させることも可能だと思います。しかし、その際に生成AIが「ここが優れている」と示唆を出したポイントの根拠は何なのか。営業活動は提案する商材や価格が変われば、提案の内容やアプローチも異なりますから、一様の基準では評価できないはずです。
その点、「Front Agent」は人の会話意識に特化した独自のアルゴリズムを搭載しており、会話の姿勢や人の無意識な意識の流れに対して根拠が確実な分析が可能です。また、分析のポイントと発言のエビデンスを紐づけて提示するため、人の納得性が高く信頼性の高い評価を行えます。
これは顧客インサイトの抽出という点でも有利です。従来、顧客インサイトを明らかにする際には、インタビューやアンケートの実施といった手法が主流でした。しかし、どんなインタビューやアンケートにも、回答者の遠慮や忖度といったノイズが挟まるリスクはあります。それらのノイズを避けるにはどうすればよいかといえば、普段の会話のなかで無意識に表現されている隠れた本音を捉えることです。「Front Agent」は営業活動時の会話を分析対象とできるため、顧客自身すら意識していない“本音”を捉えやすく、より真に迫った顧客ニーズを抽出できます。
「Front Agent」の強みは、明確なエビデンスをもとに営業活動や顧客インサイトを分析できるという点です。より信頼性が高く、疑いの余地のないデータをもとに分析を行うため、営業活動の改善や人材育成の強化により高い効果が期待できます。
即時の振り返りがPDCAを加速。インサイト分析が導く「勝ち筋」
──三菱地所レジデンスは、現在、「Front Agent」をどのように活用しているのでしょうか。
池田(三菱地所レジデンス):具体的な利用シーンを説明すると、対面営業が始まる前に、お客様に録音する旨の承諾を取り営業担当者がスマートフォンやタブレットで「Front Agent」を開き「録音ボタン」を押すだけです。録音を終了すると会話内容の要約が表示されるため、営業担当者はお客様にどのような提案をしたのかを、接客終了後に振り返れます。
録音された会話データは「Front Agent」上に蓄積され、提案のノウハウや顧客インサイトを分析して可視化することも可能です。たとえば、成約したケースと成約しなかったケースの会話内容を比較して、成約したケースにはどのようなキーワードが用いられていたのか、そのキーワードはどのような文脈で用いられていたのかなどを分析します。会話データという膨大なビッグデータから「勝ち筋」を導き出すことができるのです。
具体的な事例を紹介すると、ある時期に当社が販売していたマンションは、ダウンライトが標準となっていました。これは天井の空間を広くすっきり見せる意匠的な工夫でありました。この工夫を説明するか否かで、お客様のご理解が進み契約の成否に有意な差が生まれることがわかったのです。そこで、営業チーム全体に照明の説明を提案に盛り込むように改善したところ、チームの成約率が底上げされるという成果につながりました。
こうしたノウハウは、大量の対面営業における会話データを比較検討したからこそ抽出できるものであり、「Front Agent」を導入したからこそ得られた成果だと思っています。
──「Front Agent」を利用した現場の営業担当者の反応はいかがですか。
池田(三菱地所レジデンス):若い営業担当者ほど抵抗感が少なかったです。若い営業担当者にとっては「Front Agent」を活用すればするほどこれまで聞くことができなかった先輩社員の生の接客を学べるため、自らのスキルアップにつながります。そうしたメリットを感じやすかったのだと思います。
一方で、一部の営業担当者からは懸念の声がありました。やはり提案や会話の内容を録音されることに抵抗を感じていたのだと思います。ただし、先ほどお話しした、対面営業の振り返りが即座にできるなどのメリットを説明すると、ほとんどの営業担当者がシステムを受け入れてくれました。「Front Agent」の導入にあたっては、現場の営業担当者の協力をいかに得るかがポイントになるので、システムのメリットを丁寧に説明するのが大切だと思います。

