実は、その意味が誤解されているのは「持続的イノベーション」
「破壊的イノベーション」も誤解の多い言葉なら、「持続的イノベーション」も誤解が多い。例えば、日本発の「ガラパゴス化」された製品は行き過ぎた持続的イノベーションの結果でとして戦略上の失敗とみなされることが挙げられるだろう。また、トヨタが破壊的な製品でアメリカに乗り込んだ頃、アメリカの自動車会社は「もっと大きく、もっと豪華な」自動車を望む顧客の声に応えるため「持続的イノベーション」を優先したのだ。しかし、もし日本メーカーがいつまでも小型車だけを提供していたとしたら、破壊は起きていただろうか。前述したように、トヨタをはじめとする日本のメーカーが最終的に大企業を“破壊”したのはこの「持続的イノベーション」である。ある製品や技術によって”一撃で”破壊が起きるのではなく、破壊は小さな辺境で起き、そこからの「持続的イノベーション」が徐々に破壊を起こすというプロセスをハードディスクや鉄鋼産業などさまざまな産業で起きたことが『イノベーションのジレンマ』にも紹介されている。