働き方と学び方が劇的に変わる時代の「オンライン学習」の意味
スラン:
オンライン学習の形態はほんとうに驚異的で、スマホやタブレットを使って、効率よく人々に教えることができます。スタンフォード大学の学費は5万ドルくらいですが、Udacityなら年間733ドルです。より多くの人々に、よりコスト効率よく教育を提供しています。
最近、大きく発展した考え方に、「エンプロイメントオンデマンド(employment on demand)」があります。これは、企業はプロジェクト単位で雇用し、労働者側も会社に縛られずプロジェクトごとの契約関係で働くような仕事のやり方です。
これまではタクシー運転手になるためには試験があったりしてたいへんでしたが、ネットで手続きすれば、Uberの運転手には30分でなれます。それで私もある日やってみたのですが、コンピュータプログラムの解析によると私は運転手としての資質がないそうで、すぐにクビにされてしまいました。
とはいえ、みんながいろんな仕事に挑戦できるのはすてきなことだと思います。一生、会計士、弁護士、医者、パイロットをするのだと思わなくていいのです。1週間はホテルのオペレーター、次の1週間は運転手など、いろんな仕事に挑戦する。1週間、皮膚科をやってみようかな、なんてこともできるかもしれません。
牧野:
日本では、まだ終身雇用に近いものが残っていて、企業内で社員をさらに進化させていこうと考える方が多いと思うのです。Udacityは企業に対する能力開発などには興味を持っていますか。
スラン:
すでに多くの企業と協働してきましたが、AT&Tとのコラボレーションは驚異的でした。
AT&Tは、10万人のエンジニアを生涯にわたってトレーニングしていこうとしています。Googleが社員に無料で食事を提供するように、AT&Tは社員に無料で教育を提供するのです。
技術の進化のスピードは早いので、進化しない社員は、5~10年も経てば役立たずになるでしょう。終身雇用であっても、社員教育をしないことは大きな間違いだと思います。
当社はGoogleの社内向けオンライン教育システムを構築しました。Googleのような若く革新的な会社でも、10~15年ほど勤めている社員はいて、それだけ経つと彼らのスキルセットも陳腐化してきます。社員の持つ技術の陳腐化という問題は、今後ますます大きくなるでしょう。
このような時代に私たちは生きているわけです。前の世代までは、同じ仕事を長くやっていられました。しかし、将来は素早く仕事を変えられるようにしておかないといけないですね。
新しいすばらしい仕事に出会える可能性もあります。将来、皆さんにとってやりがいのある仕事が生まれるだろうと前向きに考えていますが、変化のスピードはとても早くなっていて、私たちはそのうちにシンギュラリティに取り囲まれるようになるでしょう。