野村総合研究所(以下、NRI)は、2025年9月、日本企業のCIO(最高情報責任者)またはそれに準じる役職者を対象に「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」を実施した。
主な調査結果は次のとおり。
2026年度のIT予算、「増加」を予測した企業は約半数
2025年度に、自社のIT予算2が前年度と比べ増加したと回答した企業は49.0%(図1)。減少したと回答した企業は7.5%で、半数近くの企業でIT予算の増加傾向が続いている。また、2026年度のIT予算では、47.5%の企業が2025年度よりも増加すると予想しており、減少すると予想した企業の7.8%を上回った。
一方で、2025年度に自社のIT予算が前年度に比べて増加したと回答した企業の割合(49.0%)は、2024年度の調査結果(59.0%)と比較して10.0ポイント低下。日本企業のIT予算の伸びはやや鈍化していることがうかがえる。
生成AIが急速に普及。「導入済み」と「導入検討中」を合わせると76%に
生成AIを「導入済み」と回答した企業の割合は57.7%で、2023年度の33.8%、2024年度の44.8%に続いて増加(図2)。「今後検討したい」と答えた企業の割合は15.2%で、2024年度の調査結果と比べ4.8ポイント下がった。ChatGPTやGeminiなどが汎用の会話型サービスとして普及し、導入を検討していた企業の一定数がすでに導入を終えたためと考えられる。
また、ソースコードを書かないか、または最小限の記述でプログラム開発を行う「ノーコード/ローコード開発」の導入率は2024年度から4.9ポイント伸びて51.0%。システム開発の効率化や、専門知識がないユーザーが自ら開発を行う市民開発における利用が拡大していると推測される。
生成AI活用に関わるリテラシー不足やリスクへの対処が課題
生成AIの活用に関わる課題をたずねたところ、最も多く挙げられたのは「リテラシーやスキルが不足している」で70.3%(図3)。次いで多かったのは「リスクを把握し管理することが難しい」で48.5%となった。
また、2024年度の調査では「リテラシーやスキルが不足している」ことを挙げた企業は65.4%だったが、今回の調査では70.3%と4.9ポイント増加。生成AIの導入が進んだ結果、実際に業務で生かしていくために一定のリテラシーやスキルが必要だと認識した企業が増えたことも、増加の要因の一つと考えられる。
約半数の企業でレガシーシステムが残存
情報システムにレガシーシステムが存在している企業の割合は、アプリケーションでは47.3%、基盤では48.2%(図4)。2021年度調査と比較すると、アプリケーションは18.4ポイント、基盤系は13.7ポイント減少したものの、約半数の企業では依然としてレガシーシステムが残存している。
また、レガシーシステムを継続利用する際の懸念や課題についてたずねたところ、「システムのブラックボックス化や有識者の不足」を挙げた企業が51.6%、「ベンダーサポートの終了」が50.1%という結果になった(図5)。
デジタル化を担う専門人材・スキルの獲得に苦戦
ITスキルの分野ごとに社内・グループ内でケイパビリティを保有すべきと考えるか、およびそれらを保有しているかをたずねた。その結果、保有すべきという割合が最も高かったのは「プロジェクトマネージャー」で80.1%。次いで、デジタル技術を理解してそれをビジネスに生かせる「ITストラテジスト」で71.9%となった(図6)。一方で、「ITストラテジスト」を保有していると回答した企業は29.6%で、ニーズが満たされていないことがわかった。このようなニーズと実態の乖離傾向は、ビジネス系やテクノロジー系のデジタル人材全般で確認できる。
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