なぜ今、大企業に「リアルな共創の場」が必要なのか?
梶川:コロナ禍を経てオンライン化が進む中、なぜ大企業がコストやリソースをかけて「リアルな共創の場」を持つ必要があるのでしょうか?
浮田(NTT西):NTT西日本は元々電話が事業の柱でしたが、かつては約3兆円あった売上が、インターネットへの移行など環境変化により今では1.5兆円を切る状態になっています。事業ポートフォリオの変革という経営課題がある中、新領域のビジネス領域にも果敢にチャレンジしていくため、外部の技術や情報、人が自然と集まってくる「場」を持つほうが、圧倒的に可能性が高まると考えました。
また、実はQUINTBRIDGEは元々グループ社員向けの研修施設として作る予定でした。「内向きな社員を、他流試合を通じてマーケットに通用する人材に育てなければ未来はない」という当時の社長の強い危機感があり、地域に開かれたオープンイノベーション施設へと急遽方針転換した背景があります。
浮田(富士通):我々もリアルな場を持つことにはメリットしかないと考えています。物理的に人が会うことで生まれる「偶発的な出会い(セレンディピティ)」の価値は計り知れません。たとえば、UiSに展示しているマシンのメンテナンスに来たスタートアップの社長が、たまたま視察に来ていた別団体の重役と出会い、そこで話が進むといったことが実際に起きています。面倒な調整をせずとも、まず直接会うことで物事が一気に進むスピード感はリアルならではです。

人が人を呼ぶ。QUINTBRIDGEによる「コミュニティ自走」の仕掛け
梶川: 施設では具体的にどのような活動が行われているのでしょうか。
浮田(NTT西):QUINTBRIDGEでは「学ぶ」「繋がる」「共創する」という3つの軸でプログラムを提供しています。
「学ぶ」の代表例である課題解決実践ゼミでは、ひらかたパーク様から課題とフィールドを提供いいただき、ゼミ生が提案をぶつけた結果、キッズカメラの写真展や、家族型ロボット「LOVOT」を活用した新たな顧客体験の創出などが実践されました。
「繋がる」では、各領域のスタートアップが登壇する「Shining Startup」というピッチイベントを定期開催しており、生成AI特集では約600名を集客しました。また、15〜16もの多様な自治体が一堂に会し、地域が直面する課題を3分間でピッチするイベントも人気で、会員さんとの間で「その課題、一緒に解決できるのではないか」と交流が生まれています。
こうした活動を支えているのが会員の主体性です。年間450回以上あるイベントの約66%が、実は会員さんの持ち込み企画なんです。大企業が「集まれ」と呼びかけるだけではすぐネタ枯れします。会員さんが自ら問いを持ち込むことで、人が人を呼ぶ仕掛けになっています。
