客観的視点で新規事業を支える「IRMの実践主体」とは?
前回までに取り上げた「IRM=Innovator Relationship Management」をより適切に実践していくために、新規事業開発に挑むイノベーター人材やプロジェクトチームとは別に、「IRMを実践・運用していくための主体」を用意することを筆者は推奨しています。つまり、新規事業開発チームやイノベーター人材の活動を、客観的な立場で支援できる「IRMの実践主体」(部署や担当者)を設けることが重要だということです。
無我夢中で新規事業開発に取り組む中で、イノベーター人材やそのチーム自身は進捗や状況を客観視することが難しいものです。チームや現場から一歩引いた別の立場から、冷静な視点を持って有効な支援を提供できること。さらには、IRMの考え方に基づくイノベーター人材を支援する知見やノウハウを集中して蓄積し、高いレベルで体系化・標準化できること。この2つの大きなメリットが、IRMの実践主体には期待できるからです。
IRMを支援する実践主体は、企業内ではどこの部署が適切でしょうか。どんなアプローチで事業開発を進めるかでその主体は異なります。
たとえば、新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度などを実行する場合は、それを運営する事務局や人事部・経営企画部などがIRMの実践主体になるでしょう。
一方、トップダウン型の新規事業開発の場合は、管掌する経営トップや担当役員、もしくは直下の新規事業専門組織などになります。ボトムアップ型の新規事業開発の場合では、支援者となり得るのは主導する事業部内の事業部長や専門チームなどが適任です。
外部と連携するオープンイノベーションの場合は、IRMの対象となる社外のイノベーター人材と対面する部署がIRMの実践主体になるのに適しています。大切なのは、イノベーター人材とIRMの実践主体の立場を明確に分けること。これが再現性の高い新規事業開発を実現するためのカギとなります。
IRMの実践主体は、IRMの考え方と体制をベースにしながら、会社全体の組織を変革していくために次の項目を推進していきます。
新規事業のリーダーに適した人材=イノベーター人材の発掘・配置
- イノベーター人材の要件や定義を理解・検討する
- イノベーター人材の志向性・資質を把握し、発掘・配置する
イノベーター人材やチームの能力・成果を最大化する育成・活躍
- 事業開発プロセスにおいてイノベーター人材が直面する壁や課題を知る
- 人材や事業フェーズに合わせた支援を行い、育成・活躍を促進する
健全な多産多死を構造的に実現する組織文化や仕組みの構築・定着
- 客観性のある明確な撤退基準を定めて対話する
- 成果やプロセスから得た知見や示唆を蓄積して体系化・形式知化する
- 次の挑戦につながるサイクルを生み、挑戦しやすい組織文化と構造を作る
これらのプロセスを通じて、新規事業開発を再現性高く実行し続けられる先進的企業に相応しいイノベーティブな組織への変革を目指します。それでは、各プロセスについて見ていきましょう。
