「3%の努力」が利益を2倍に変える──HRBPが持つべき計数感覚
池側:土井さんがよくお話しされる「3%の改善で利益が2倍になる」というマジックについても、ぜひ具体的に教えていただけますか。多くの現場リーダーは、利益を2倍にするには売り上げを2倍よりずっと大きくしなければならないという絶望感の中にいます。
土井:はい。これは決して魔法ではなく、ごくシンプルな算数です。たとえば、以下のような収益構造の事業を想定してみましょう。
- 売上:100
- 売上原価:60
- 販管費:35
- 営業利益:5(100-60-35=5)
ここで、HRBPが介在し、組織能力の向上や活動の最適化を通じて、以下の「3%の改善」を同時に実現したとします。
- 単価の3%アップ(100→103):顧客への提供価値を見直し、単価を3%上げる。
- 売上原価の3%ダウン(60→58.2):材料の見直しや、調達先の変更などを通じて原価を3%改善する。
- 販管費の3%ダウン(35→33.95):組織構造をシンプルにし、間接業務の効率を3%高める。
これらを再計算すると、新たな営業利益は「10.85」になります。
- 103(売上)-58.2(原価)-33.95(販管費)=10.85
栗原:元々「5」だった利益が「10.85」になり、わずか3%ずつの改善で利益が2倍以上(217%)に跳ね上がるのです。
池側:数字で見ると非常にインパクトがありますね。「3%なら自分たちでもできる」という希望が見えます。
土井:そのとおりです。HRBPは、単に「人を育てる」のではなく、「この活動を3%効率化するために、どのようなスキルが必要か」「この3%の単価アップを実現するために、どのようなマインドセットへ変えるべきか」という視点を持つべきです。この「3%のアラインメント」の積み重ねが、事業を圧倒的な勝利へと導くのです。
BPの介在価値を最大化する、組織を動かす「ストーリーの共創」
栗原:最後に、これからの日本企業のHRBP、FP&Aに関わる方に向けてメッセージをお願いします。
土井:戦略とは、難しい顔をして作るものではなく、誰かに話したくなるような面白い「ストーリー」であるべきです。一橋ビジネススクール特任教授の楠木建氏がおっしゃるように、活動同士がどうつながり、どう成果を生み、それが次のチャンスをどう作るかという流れです。
HRBPは、事業リーダーと一緒にこのストーリーを描く「共創者」であって欲しい。人事の専門知識を武器にしながらも、常に事業の成功に本気で向き合う覚悟。それが、HRBPを経営幹部への「登竜門」に変えていくはずです。
池側:FP&AとHRBPが連携すれば、財務と人の両面から経営を強力にドライブできます。問うことを恐れず、事業に本気で向き合う覚悟を持つ。そんなプロフェッショナルが日本企業に増えていくことを願っています。
栗原:本日は貴重なお話をありがとうございました。

