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日本版FP&A×HRBPの真髄──戦略を「組織能力」へと翻訳し、事業を勝利へ導くパートナーへの進化

ゲスト:株式会社インヴィニオ 土井哲氏、ストラットコンサルティング 池側千絵氏

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「開示ありき」の人的資本経営が戦略を形骸化させる

栗原:2022年頃からの「人的資本経営」のトレンドは、HRBPの普及の追い風になっていますか。

土井:追い風ではありますが、懸念もあります。一つは「開示ありき」になっている点です。人的資本経営の国際規格である「ISO 30414」に合わせて指標を揃えることばかりが先行し、本来の目的である「企業価値の向上」につながっていない。より深刻なのは、戦略そのものの欠如です。戦略が曖昧なまま、人的資本だけを整えても意味がありません。

 本来は、戦略を実現するために「組織として何ができなければいけないのか」という「組織能力(Organizational Capability)」から逆算してスキルを特定すべきなのです。これからはAIの進化により、単なる人的資本だけでなく、外部の有能な人材とネットワークを組むことを含めた関係性、いわば「社会関係資本(Social Capital)」のような概念へのシフトも必要になるでしょう。

戦略を「組織能力」へ翻訳する──HRBPの核心的スキル

栗原:HRBPが事業リーダーのパートナーになるためには、まず「戦略」を共通言語にする必要がありますね。

土井:はい。実は戦略ではないものを戦略だと勘違いしている人が多い。たとえば“〇〇分野への注力”といった「方針」や、“売り上げ1兆円”という「目標提示」、あるいは“DX推進室の設置”といった「組織の新設」などは、戦略そのものではありません。

 戦略の定義は様々ですが、私はマイケル・ポーターの定義を中核に置いています。つまり、戦略とは「意図的にライバルとは異なる一連の活動を選び、独自の価値を提供することである」と。

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資料提供:株式会社インヴィニオ/クリックすると拡大します

 まず「誰に対して」「どのような独自の価値を提供するのか」、ビジネスモデルキャンバスにおける「顧客セグメント(CS: Customer Segments)」と「価値提案(VP: Value Propositions)」を明確にします。独自の価値(≒価値提案)とは、顧客にとって本当に「ありがたい」ものであり、かつ競合には真似できない「USP(Unique Selling Proposition)」があるかどうか。ここが曖昧だと、その後の人材戦略もすべて上滑りしてしまいます。

組織能力と活動をつなぐ「活動システムマップ」の威力

池側:FP&Aもそうですが、HRBPも「戦略は現場で考えろ」という丸投げ・無茶振り状態を脱して、いかに具体的な構造に落とし込めるかが勝負ですよね。

土井:そのための強力なツールが「活動システムマップ(CASM:Capability & Activity System Map)」で、作成の手順は以下のとおりです。

  1. 提供価値(VP)を真ん中に置く:顧客に選ばれる理由を明確にします。
  2. 必要な組織能力(Capability)を定義する:その価値を生むために、組織として「何ができる必要があるか」を書き出します。
  3. 具体的な活動(Activity)に落とし込む:能力を発揮するために、メンバーが日々行うべき活動を動詞で表現します。

 たとえばIKEAの例では、「良質な家具を安く提供する」という価値を支えるために、「最小限の原価で商品が作れる」という組織能力が必要になり、それを実現するために「自社で設計する」「顧客に組み立てさせる」といった活動が定義されます。

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 ここまで可視化すると、初めて「この戦略を実行するには人間工学の知識を持った人材が何人必要か」とか、「どの活動をテクノロジーに置き換えるべきか」といった議論が、事業リーダーと極めて解像度高く行えるようになる。CASMを描くことで、実は現在の組織にはないスキルや、逆に「止めてもいい活動」が浮き彫りになります。HRBPは、このマップを使って事業リーダーと「本当にこの活動で勝てるのか?」という本質的な対話を仕掛けるべきなのです。

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「日本版HRBP」が対峙すべき4つのギャップと問題解決

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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