「分析」だけではなく「目標を達成するために明日、一緒に何をすべきか」を考える
池側:FP&Aが高度な意思決定支援を行う上で、ITやデジタル基盤の存在は欠かせません。アステラス製薬ではどのようなデジタル変革を進められているのでしょうか。
ジャック:私たちは「情報の民主化」と「AIによる高度なオペレーション」を推進しています。具体的には、現場の定性的なデータや財務データを集約した統合データウェアハウスを強化し、セルフサービスでデータ分析ができる環境を整えました。また、Qlikなどを活用したStandardized Reportingにより、経営陣から現場までが同じ目線で最新の指標を確認できます。
さらに、全社向けに独自のエージェント「Stella」をはじめとする生成AIツールを導入し、データ集計やレポート作成の自動化を進めています。社内プログラム「Astellas Boot Camp for Data Science(ABC4DS)」には700名以上の従業員が参加し、データサイエンスのリテラシー向上を図っています。データ集計などの作業時間を削減できたからこそ、FP&Aは「数字の背景にあるストーリーの解釈」や「事業への提案」に時間を費やせるようになっています。

池側:最後に、単なる「数字の集計屋」から「企業価値創出を支えるビジネスパートナー」へと脱皮を目指す日本企業のファイナンス担当者や若手人材に向けて、メッセージやアドバイスをお願いいたします。
ジャック:私からお伝えしたいのは、FP&Aの仕事は「P/Lの先を見据える刺激的な探求である」ということです。数字を集計して綺麗にレポートにまとめるだけで満足してはいけません。大切なのは、ビジネスパートナーに対して「どのような選択肢があり、それによってどのような事業成果・患者さんへの価値が得られるか」を提示し、影響を与えるスキル(Influencing skills)を磨くことです。
アステラスのようなHQ(本社)機能に身を置くことは、全社統合(Enterprise)の広い視点と現場の深い洞察を融合させ、人や組織に直接インパクトを与えることができる素晴らしい機会です。不確実性を恐れず、変化を楽しむマインドセットを持って挑戦してほしいと思います。
北村:日本のファイナンス組織に向けて、私からは2つの重要なポイントを強調したいと思います。
1つ目は「グローバルな多様性(ダイバーシティ)」の推進です。当社のファイナンス・リーダーシップチームには多くの外国籍メンバーが在籍しており、ジャックをはじめ米国やシンガポールなど世界各国から優秀なビジネスファイナンス人材が集っています。日本人だけで組織を構成するのではなく、異なるバックグラウンドを持つ多様なメンバーと協働しながら、グローバル水準の働き方や意思決定を学べる環境を整えることが、組織の能力を劇的に高め、グローバルレベルで真に競争力を発揮できる日本人リーダーの育成にもつながると考えています。
2つ目は「結果に対する執着(デリバリー)」です。私は「FP&A(計画と分析)」という言葉以上に「FBP(ファイナンス・ビジネスパートナー)」という呼び方を好みます。私たちは単なる分析屋ではなく、事業の共同オーナーだからです。目標を達成できなかった際に、その要因を分析して説明するだけでなく、「目標を達成するために明日何をすべきか」をビジネス部門と共に考え抜き、泥臭く結果を出し切る。この「結果への執念」こそが、ファイナンスが経営から真に信頼されるパートナーになるための絶対条件です。
池側:不確実な時代だからこそ、未来志向で事業とともに汗をかくFBPの存在が不可欠ですね。本日は変革の本質に迫る貴重なお話をありがとうございました。



