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企業価値向上のためのFP&A

アステラス製薬のグローバル標準のファイナンス組織──戦略実行と価値創造を牽引するFP&Aの役割とは

ゲスト:アステラス製薬株式会社 北村淳氏、Jacqueline Pua氏

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アステラス製薬のFP&Aによるコスト最適化と成長投資のバランス

池側:アステラス製薬は、2025年度本決算で過去最高となる売上収益2.1兆円を達成し、2026年度業績予想についても売上収益2.2兆円以上を見込んでいます。そのうえで「経営計画2026」では、将来的な「パテントクリフ」を乗り越え、2030年代半ばに、再び過去最高の売上収益を実現するという高い目標を掲げていらっしゃいます。

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図版出典:アステラス製薬株式会社「経営計画2026」より/クリックすると拡大します

 一方で、主力製品XTANDIの独占販売期間満了(LOE)を見据えた構造改革も重要です。全社優先事項である「Sustainable Margin Transformation(SMT)」とキャピタルアロケーションのバランスをどのようにコントロールしているのでしょうか。

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ストラットコンサルティング株式会社 FP&Aアドバイザー 池側千絵氏

北村:私たちは、XTANDIのLOEを克服し持続的な成長軌道に乗せるため、「Growth Strategy(重点戦略製品を中心とした成長戦略)」「BOLD Ambition(イノベーションの推進)」「Sustainable Margin Transformation(SMT:持続可能なマージン変革)」という3つの全社的な優先事項(3EP)を推進してきました。

 SMTは単なる短期的なコスト削減策ではありません。目的は、将来の成長投資の原資を捻出しながら、筋肉質な企業体質へ変革してコア営業利益率30%を目指すことにあります。2027年度までに累計1,200億〜1,500億円のコスト最適化を目標としており、2025年度までの2年間累計で計画通り650億円のコスト最適化を達成し、また重点戦略製品の成長の影響も合わせてコア営業利益率も26%まで回復(2年間で約9%の改善)しました。

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図版出典:アステラス製薬株式会社「経営計画2026」より/クリックすると拡大します

 「経営計画2026」で2030年に目指すべきとして定めたゴールから逆算し、将来の成長エンジンとなるイノベーションへの投資を確保しながら今この瞬間のリソースや短期利益をどう最適にコントロールすべきかを導き出す。この一見矛盾する二つの時間軸をデータに基づいて調整し、経営マネジメントを数段も上のレイヤーへと「高度化」させることこそが、FP&A部門の最重要ミッションです。

池側:具体的にはどのようなアプローチでコスト最適化を進めているのでしょうか。

北村:SMTは以下の4つの柱で構成されています。

 1つ目は自社機能拡張による外注費の削減(臨床試験などの自社内製化による開発スピード向上とコスト削減)です。2つ目はグローバルオペレーションのさらなる集約と効率化(ポーランド、インド、メキシコへのグローバルケイパビリティセンター「GCC」の設立とデジタル・AI活用)です。3つ目はROIを意識した販売関連費用の最適化(成長製品への優先投資と成熟製品の費用最適化)。最後が継続した全社レベルでのコスト最適化の徹底(聖域なき一般管理費の合理化と製造原価の改善)です。

 削減したコストはそのまま利益にするだけでなく、重点戦略製品(PADCEV、IZERVAY、VEOZAH、VYLOY、XOSPATA)の市場浸透や、Primary Focus(がん免疫、標的タンパク質分解誘導、遺伝子治療、再生と視力の維持・回復)といった将来の成長エンジンへの投資に再配分しています。

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図版出典:アステラス製薬株式会社「経営計画2026」より/クリックすると拡大します
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図版出典:アステラス製薬株式会社「経営計画2026」より/クリックすると拡大します

「Brand@Center」とコマーシャル領域におけるFP&Aの貢献

池側:コマーシャル領域(医薬品の営業・マーケティング・販売促進活動全般)において、FP&Aは具体的にどのような役割を果たし、意思決定を支援しているのでしょうか。また、FP&Aの貢献でどのような成果が出ていると考えられますか?

北村:2年ほど前に導入した「Brand@Center(ブランド・アット・センター)」の推進が大きな鍵になっています。これは製品ごとの「ローカルブランドチーム」の機能とコラボレーションを強化し、それぞれのチームが製品ブランド価値最大化を目標として、より機動的(アジャイル)な活動を行えるようにする取り組みです。各チームには、MA(メディカルアフェアーズ)からはMAリードやMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)、HEOR(医療経済・アウトカムリサーチ)などが参加し、コマーシャル部門からはマーケティングリードやセールス、マーケットアクセスなどが参画した、まさに部門横断型チームです。

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図版出典:アステラス製薬株式会社「経営計画2026」より/クリックすると拡大します

 従来は「機能(マーケティング、営業などの)」や「地域」ごとに予算が管理されていたため、意思決定において部門間の利害が対立しやすい構造となっていました。そこで「市場におけるブランド」を意思決定のオーナーと定め、現場のブランドチームに大幅な権限委譲を実施しました。

 「P/Lにおいて投資をするのは良いが、利益の成長率は売上の成長率よりも高くならなければならない」というシンプルなゴールを設定し、ブランドチーム全体で予算の再配分や選択を行わせています。

ジャック:当時、私が国際市場(International Markets)のコマーシャル・ファイナンス・リードを務めていた際、まさにこの実践にあたりました。「制約なく自由に発想しよう(Unconstrained thinking)」と促すと、現場からは膨大な施策アイデアや予算リクエストが上がってきます。

 そこでFP&Aの出番となります。私たちは事業責任者(GMやプレジデント)と膝を突き合わせ、「素晴らしいアイデアですね。では、どうやって1ドルあたりの生産性や有効性(ROI)を高めますか?」と問いかけます。無限のリソースが存在しない中で、成功確率や生産性を厳しく見極め、収益性と成長投資のバランスを取るフィルターの役割を果たすのがFP&A(FBP)です。

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アステラス製薬のFP&A組織の4つの活動領域と組織構造

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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